研究課題/領域番号 |
26712025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 渉 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (40708161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、大動物家畜をはじめとする飼育に労力やコストを要する非モデル動物のゲノム配列について、オーソログ領域に置換したマウスを作出し、個体レベルで非モデル動物のゲノム配列機能を解析することが可能か、そのシステム構築と方法論の検証を目的としている。 ゲノム領域置換マウスの効率的な作製法を確立するために、CRISPR/Casをはじめとしたゲノム編集ツールを利用して受精卵を介した外来配列のノックインやゲノム領域置換が可能であるか検証を行っている。これまでの検討から、導入するDNA形状がノックイン効率や胚発生率に影響することが明らかとなっている。本年度は、どのような分子機構が関与するかを明らかにするために、DNA修復機構に関連する遺伝子群および細胞分裂停止関連遺伝子群のノックアウトマウス系統を作製した。今後はこれらの受精卵を用いて、外来DNAの認識機構およびノックインの分子機構を明らかにする予定である。 また、CRISPR/Casによる遺伝子組換え動物作製の汎用性を高めるため、広く利用されているCRISPRとは異なるS. thermophiles由来のCas9を用いて、受精卵を介したノックアウト/ノックインマウスの作製が可能であることを報告した。また、受精前の卵母細胞への応用を検討し、核移行システムの人為的制御を行うことで未受精卵においてもCRISPR/Casのによるゲノム改変が可能であることを報告した。 非モデル動物に関連するゲノム配列置換については、ブタ椎骨数に関して報告されたNR6A1多型の導入を試みたが、胚発生中に致死となることが示唆されたため、同様のSNPを導入したES細胞を樹立した。また、キリン首長に関連するとされるFgfrl1の7ヶ所のアミノ酸変異について、同時に6ヶ所の置換を行ったマウスの作製に成功した。現在bi-allele化しつつ、残り一か所への変異導入を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPRを利用した新たなゲノム改変動物作製系を確立し報告した。外来DNAによる胚発生への影響に関連する分子機構の解析については、計画したノックアウトマウス系統の作製を完了した。また、非モデル動物の特異的表現型に関連する遺伝子変異については、計画の一部は導入を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に作製したDNA修復関連遺伝子群およびアポトーシス関連遺伝子群のノックアウトマウスを用いて、外来DNAによって引き起こされる初期胚発生致死および高効率ノックインに関連する分子機構の同定を行う。また、得られた知見を基に受精卵内での長鎖配列のノックインや領域置換が可能であるか検討する。 また、非モデル動物の特異的表現型を担うとされるゲノム配列情報については、オーソロガス領域へ導入したマウスをbi-allele化し、表現型へ及ぼす影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム改変個体の解析へ移行できておらず、解析に必要である物品類の購入に至っていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に計画している個体解析に必要な物品類(抗体、遺伝子工学実験用酵素、オリゴヌクレオチド、マウス購入費など)の購入に充てる。
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