研究課題/領域番号 |
26712026
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩森 巨樹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70647362)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 精子幹細胞 / 細胞培養 / エピジェネティクス / 細胞間架橋 / JMJD3 |
研究実績の概要 |
本研究ではJMJD3により制御される連結精原細胞の断片化を促進するエピジェネティックネットワークの解析を初期の中心課題としており、初年度はその検証実験系となる連結精原細胞の断片化を可視化する細胞の開発およびChIP-seqによるJMJD3標的ゲノム領域の同定を計画していた。当初の計画通りCRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集を利用し、1)精子幹細胞を直接ゲノム編集する方法と、2)遺伝子改変マウスの作製を経由して精子幹細胞を樹立する方法を試みた。まずは、ES細胞を用いて遺伝子ノックインの条件検討、効率化を試みたところ、効率よくノックイン株が得られた。この結果を踏まえ、エレクトロポレーション法およびリポフェクション法を用いて精子幹細胞に遺伝子導入を試みたが、遺伝子導入効率が想定外に悪く遺伝子ノックイン細胞が得られなかった。今後は精子幹細胞での導入実績が報告されているNucleofectorを導入し、遺伝子導入を行う予定である。一方で、2)の遺伝子改変マウスの作製については、受精卵前核に発現ベクターおよびターゲティングベクターを顕微注入し、直接的にゲノム編集―遺伝子ノックインすることを試みた。しかし、ゲノム編集個体は確認できたが、遺伝子ノックインには至らなかった。そこで、遺伝子ノックインES細胞は作製済みであるため、常法通り胚盤胞に注入しキメラを経て遺伝子改変マウスの作製を試みる予定である。 JMJD3標的ゲノム領域の同定については、当初の計画では精原細胞可視化マウス作製し、そこから精子幹細胞を回収して解析を行う予定であったが、生殖細胞特異的JMJD3欠損マウスから直接培養精子幹細胞を樹立できる傾向がみられたので、計画を変更し培養精子幹細胞を用いて解析するため、培養を続けている。十分な数の細胞が得られ次第、ChIP-seqを行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Casシステムを用いて精子幹細胞内で直接ゲノム編集するため、エレクトロポレーション法およびリポフェクション法を用いて遺伝子導入を試みた。しかし、どちらの方法によっても遺伝子導入効率が想定外に低く、遺伝子ノックイン細胞が得られなかった。また、遺伝子改変マウスを作製する為に発現ベクターを受精卵前核に顕微注入し受精卵内での遺伝子ノックインを試みたが、従来の報告通りゲノム編集は効率よく見られるものの、遺伝子ノックインマウスは得られなかった。また、上記の通りマウスが作製できなかったため、ChIP-seqを行うことができなかった。以上の理由により、若干の遅れがある。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度、ES細胞を用いてCRISPR/Casシステムによるゲノム編集の条件検討を進めており、精子幹細胞に遺伝子を導入できれば、ゲノム編集並びに遺伝子ノックインは十分可能であると考えられる。そこで、精子幹細胞への遺伝子導入で良い実績の報告されているNucleofectorを用いて、遺伝子導入を行う。ここで、遺伝子導入法を確立しておくことは、二年次以降での遺伝子導入を計画した実験にも有用であると考えられる。 遺伝子改変マウスの作製に関して、受精卵前核への顕微注入によるゲノム編集―遺伝子ノックインについては、すでに遺伝子ノックインES細胞が作製できている為、胚盤胞へのES細胞注入によるキメラ作製を優先的に行い、マウスを作製する。 JMJD3標的ゲノム領域の同定については当初は作製した遺伝子改変マウスを利用して精子幹細胞を回収する予定であったが、生殖細胞特異的JMJD3欠損マウスから直接、培養精子幹細胞が樹立できる傾向が見られた為、予定を変更し、樹立培養精子幹細胞を用いて解析を行う。これにより、細胞回収がより簡素化されるばかりでなく、解析可能細胞数も増える為、当初の計画よりも効率が良いと考えられる。また、上記に述べた遺伝子導入を確立できた後にはこれらの細胞を直接ゲノム編集することにより、JMJD3欠損精原細胞断片化可視化精子幹細胞が樹立できる為、JMJD3制御遺伝子群の解析を行う上で有用であると考えられる他、初年度の遅れを挽回できると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に比べると実験材料となる細胞、マウスの作製に遅れが出ている為、予定通りの培養および飼育が出来ていない。そこで、それぞれの培養および飼育にかかる経費が予定よりも少なくなった為、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
精子幹細胞への遺伝子導入に問題があったので、精子幹細胞遺伝子導入に実績のある遺伝子導入装置Nucleofectorを導入する。この装置を用いることで遺伝子導入効率が改善できる他、ES細胞を用いて検討したゲノム編集条件を参考にできるので、計画よりも早く遺伝子改変細胞を作製できると考えられる。また、遺伝子ノックインES細胞を使ってキメラを経て遺伝子改変マウスを作製するため、当初の計画よりも使用マウス数を削減できる。前年度に使用できなかった細胞培養およびマウス飼育がそのまま次年度に繰り越されるわけではなく、次年度には減少することが想定されるため、遺伝子導入装置の購入による影響は少ないと考えられる。
|