| 研究課題/領域番号 |
26712027
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
櫻井 健志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (20506761)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | 昆虫 / 性フェロモン / 生殖隔離 / カイコガ科 / フェロモン選好性 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では、性フェロモン交信系のモデル生物として研究が進んでいるカイコガとその近縁種を用いて、フェロモン選好性を決定する原因遺伝子を同定する。そして、原因遺伝子の種間での類縁関係の比較解析を行うことで、フェロモン認識機構の進化の遺伝子基盤を解明することを目的とする。
本年度は、カイコガ近縁種のフェロモン受容体遺伝子の単離と機能同定を主に行った。なお、実施期間中にカイコガ近縁種の一つであるテンオビシロカサンのメス性フェロモンの化学情報とそれらに対する同種オスの選好性に関する情報を入手した。そこで、テンオビシロカサンを新たに解析の対象種として加えて研究を遂行した。一方で、開始当初に対象種としたウスバクワコについては年度内での生体試料の入手が困難となった。そのため本年度はテンオビシロカサン、イチジクカサンの2種を研究対象とした。
まず、テンオビシロカサン、イチジクカサンのオス成虫触角のRNA-seqのデータからフェロモン受容体様遺伝子配列を探索した。その結果、両種においてカイコガのフェロモン受容体BmOR1とBmOR3の相同遺伝子にあたる受容体遺伝子を含む複数種のフェロモン受容体候補遺伝子を見出した。そこで、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた応答計測により、これらの受容体のリガンド同定を試みた。その結果、イチジクカサンのフェロモン受容体はカイコガの相同遺伝子にあたる受容体とリガンド特異性が一致することが明らかになった。これらの結果から、イチジクカサンとカイコガの間でフェロモン受容体のリガンド選択性が保存されていることが示唆された。一方で、テンオビシロカサンの受容体の機能同定にはいたっておらず次年度引き続き解析を進める予定である。
また本研究に関連して、カイコガを中心にガ類の性フェロモン受容・識別機構に関してまとめた総説を発表した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度に(1)単一感覚子記録によるフェロモン受容細胞の応答特性の解析および、(2)フェロモン受容体様遺伝子の網羅的機能同定、を並行して進める予定にしていた。しかしながら、単一感覚子記録の実施に必要な生体試料を定期的に入手するための環境の構築に時間を要したため、主に(2)項に注力し研究を実施した。それにより、(2)項に関する次年度の計画を前倒しする形で、初年度中に対象種のフェロモン受容体様遺伝子の配列情報をほぼ網羅的に取得するにいたった。さらに、これらの受容体遺伝子のアフリカツメガエル卵母細胞発現系における機能計測も順調に進んでいる。これらの理由のため、現在までおおむね順調に研究が進んでいるものと考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
達成度で述べたように、初年度は計画中の(2)項に注力したため、(2)項については計画より早く進展している。一方で、(1)項については計画より遅れが生じているため、次年度は(2)項を継続して進めるとともに、(1)項に計画より多くのエフォートを割いて実施することで研究を推進する。なお(1)項の実施のために必要な生体試料の入手に関してはすでに解決済みである。上記に加えて(3)フェロモン受容細胞‐触角葉投射パターンの解析に着手する。(1)-(3)項で蓄積した情報を分析することで(4)種間比較によるフェロモン選好性の種間変異をもたらすステップの特定、が可能となる。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
生物試料の入手の問題のため、初年度に実施予定であった計画項目(1)単一感覚子記録によるフェロモン受容細胞の応答特性の解析を次年度の計画に持ち越した。そのため、当該計画に必要な試薬、ガラス器具等の消耗品の購入を見送った。この理由により、次年度使用額が生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
次年度は計画項目(1)を実施する計画にしている。そのため当該計画に必要な消耗品の購入に主として使用する予定である。
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