研究課題
AHG1はタンパク質脱リン酸化酵素をコードし、アブシジン酸(ABA)による種子発芽の抑制や種子休眠で働く主要な因子である。我々はABAシグナルを介した種子休眠を制御するシグナルネットワークの解明を目指し、AHG1に相互作用する因子AHG1 Interacting Protein 4 (AHIP4)とAHIP11に相互作用する因子の同定とAHIP4とAHIP11の機能解析を試みた。酵母ツーハイブリット法(Y2H)を用いた解析より、AHIP4とAHIP11にそれぞれ相互作用を示す因子の同定に成功し、現在詳細な解析を進めている。昨年度アフィニティーカラムを用いたプロテオーム解析で単離した候補AHIP4相互作用因子について、Y2Hによる確認実験を行ったところ、候補AHIP4相互作用因子はAHIP4との相互作用が弱かった。AHIP11過剰発現体の作出が困難であったため、β-エストラジオールでAHIP11の発現を誘導する組換え植物を作出し、今後の解析に用いる予定である。AHIP4の機能解析では、昨年度同定したAHIP4の候補リン酸化部位と候補ユビキチン化部位にアミノ酸置換を導入した組換え植物体を作出した。候補ユビキチン化部位をアルギニンに置換した組換え植物体は、ABA応答がベクターコントロールと同程度であった。一方、同定した候補リン酸化部位を全てアラニン残基に置換した組換え植物体は、ほとんどAHIP4変異タンパク質の発現が検出さず、これらアミノ酸残基の置換は、AHIP4の機能に何らかの影響をおよぼす可能性が示唆された。興味深いことに、AHIP4は錯体を配位することを見出した。さらに、錯体の配位に関わるAHIP4の候補アミノ酸残基の同定にも成功し、現在詳細な解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
AHIP4とAHIP11に関する研究は順調に進展している。特に、AHIP4が錯体を配位するなど、AHIP4の機能解明につながる新たな知見を得ることにも成功し、AHIP11に関しては、AHIP11の相互作用因子より、AHIP11の機能推定に役立つ結果も得たことから、本年度の目標を達成したと考えている。
引き続き、AHIP4とAHIP11の機能解析やこれまでに同定したAHIP4とAHIP11にそれぞれ相互作用する因子の機能解析を行い、ABAシグナルを介した種子休眠を制御するシグナルネットワークの解明を目指す。
本研究を進展するためには、H28年度以降も専門知識と技術を有する研究支援者のサポートが必須であり、そのためにはH27年度配分された研究費の一部をH28度以降に繰り越す必要があった。そのため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額は、H28年度からH29年度の研究支援者の人件費として主に使用する。万が一、古い実験機器が故障するなど不測の事態が発生した際、必要な場合は古い機器の修理や更新に使用することも検討する。
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