研究課題
過栄養摂取に起因する生活習慣病や大気汚染に起因する呼吸器疾患は現代社会の深刻な健康問題となっており、その発症機序解明と創薬標的同定は薬学分野の重要な研究課題である。マクロファージなどの自然免疫担当細胞は、過栄養摂取により生じる代謝物やシリカナノ粒子などの環境汚染物質に応じて炎症性因子の産生を誘導し、生活習慣病や呼吸器疾患の発症要因となる。自然免疫関連受容体であるNLRP3は、これらの刺激物によるファゴソームの損傷に応じて情報伝達因子ASCおよびプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、サイトカインIL-1betaやIL-18の産生を介して炎症を惹起する。尿酸塩結晶やシリカナノ粒子などの刺激物によるNLRP3インフラマソームの過度の活性化は痛風や塵肺などの炎症性疾患の発症要因となるため、NLRP3インフラマソーム活性化機序の解明に取り組んだ。今年度は、フィトケミカルであるレスベラトロールがNLRP3インフラマソーム依存的な炎症応答を抑制することを見出し、その作用標的が微小管であることを明らかにした。また、尿酸塩結晶やシリカナノ粒子などの刺激は、NLRP3インフラマソーム非依存的なメカニズムにより、IL-1alphaをはじめとした炎症制御因子の産生を誘導するケースが存在することを見出した。さらに、刺激性の粒子によって誘導されるNLRP3インフラマソーム依存的な炎症応答および非依存的な炎症応答それぞれに対して、活性化を抑制する化合物を同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
NLRP3インフラマソームの活性化を抑制する化合物の作用機序を解明し、共同筆頭著者として原著を発表した。また、NLRP3インフラマソームを介さずに放出される炎症制御因子を複数同定することが出来た。さらに、これらの研究成果を国内外の学術集会において口頭発表した。
NLRP3インフラマソームに依存しない炎症制御因子の放出機構について、その分子機序を解明する。また、新規の炎症制御因子をCas9/CRISPRのシステムを用いてノックアウトし、次年度以降に病態生理的な意義の解明を進めるための準備を進める。さらに、炎症応答を抑制する化合物をレスベラトロール以外にも同定しているので、その作用機序を解明する。
研究が順調に進んだため、当該実験に用いる消耗品の費用が当初の見積もりを下回った。また、本研究に関する論文の発表を見越してリプリント費用を計上していたが、当該論文の受理がH26年度末になったため、リプリント代はH27年度に必要となる。
H26年度に同定した制御因子候補が真の制御因子であることを、Cas9/CRISPRによる遺伝子ノックアウトの技術を用いて確認する。また、本研究の成果を国際学術雑誌に原著として新たに発表することを目指す。
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