研究課題
本研究期間内に、CYLD発現消失が癌患者の生命予後の悪化を導く要因を解明するため、以下の検討を行った。1.腫瘍組織におけるCYLD発現消失の原因究明:口腔癌や神経膠芽腫などの腫瘍組織の解析から、腫瘍における低酸素領域と一致してCYLDの発現が消失(減少)していることが明らかとなった。2.CYLD消失に伴う腫瘍悪性化に関与する細胞シグナルの同定:各種がん細胞株においてCYLDの発現をノックダウンすることにより、腫瘍の悪性化に密接に関与しているTGF-βやNF-κBシグナル伝達経路が過剰に活性化していることが明らかとなった。3.抗癌剤の薬剤感受性を左右するCYLDの新規標的分子の同定:CYLD発現の消失による薬剤感受性への影響は、細胞傷害性抗がん剤(シスプラチンなど)とEGFRを標的とした分子標的薬では大きく異なり、同じEGFRを標的とした分子標的薬においても異なることが明らかとなった。以上1~3の結果より、腫瘍組織におけるCYLD発現消失の分子病態メカニズムの一端が明らかになり、CYLD発現の生物学的・臨床的意義に関する基礎的知見が得られた。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、各種癌組織において確認されるCYLDの発現減少に着目した病態解析を行い、CYLD発現消失が癌患者の生命予後の悪化を導く要因を解明することを最終目的としているが、本年度の研究結果から、1.CYLD の発現消失(低下)に低酸素環境が関与している可能性、2.CYLD発現消失により、 腫瘍の悪性化に関連しているシグナル伝達経路(TGF-β、NF-κBなど)が過剰に活性化していること、3.CYLD発現消失が、EGFRを標的とした分子標的薬の感受性を大きく変化させていること、などの成果が得られており、次年度以降の研究計画を遂行するうえで十分な基礎的知見が揃っている。
本年度の研究結果から得られた基礎的知見を基盤とし、次年度は、1. 臨床検体(腫瘍組織)を用いた組織解析による、CYLD発現パターン・抑制メカニズムの詳細な解明2. CYLDの発現抑制により過剰に活性化されている細胞内シグナルに着目した表現型解析・活性化メカニズムの解明3. 各種抗がん剤への感受性に関する分子レベル解析、CYLD発現消失が影響を及ぼしている分子の同定上記の検討を継続して行い、腫瘍組織におけるCYLD発現消失の臨床学的意義を明らかにしていく予定である。
臨床検体を用いた遺伝子発現解析において、予定していたよりも多くの癌種において共通の現象が確認されたため、当初予定していた各がんにおける病態解析(組織解析、プロテオーム解析など)が27年度以降にずれ込んだため。
前年度に実施予定であった病態解析(組織解析、プロテオーム解析など)のため、組織染色関連実験費、プロテオーム解析費、LC-MS/MS カラムの購入、また、細胞培養器具・試薬、動物関連実験費などへの使用を予定している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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