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2016 年度 実績報告書

癌治療の個別化への道を切り開く予後規定因子CYLD発現消失の分子機能動態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26713006
研究機関熊本大学

研究代表者

城野 博史  熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (40515483)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード個別医療 / 癌 / 予後予測因子 / シグナル伝達 / 薬剤感受性
研究実績の概要

本研究期間では、CYLDの発現消失が癌患者の生命予後を左右する要因を解明し、CYLDの観点から難治癌の治療戦略開発に新たな道を切り開くべく、以下の3つの項目について継続して検討を行った。
【1】腫瘍組織におけるCYLD発現消失の原因究明:これまでの結果から、各種がん患者由来の腫瘍組織(口腔扁平上皮癌、神経膠芽腫、乳癌など)における低酸素領域におけるCYLD発現低下に関して、各種癌由来の培養細胞においても同様の現象が確認されたため、そのメカニズムについて解析したところ、標的遺伝子発現を特異的に抑制するmicro RNA(miR-182など)や転写因子(Snail-1)などの発現変動が一部関与している可能性が示された。
【2】CYLD消失に伴う腫瘍悪性化に関与する細胞シグナルの同定:これまでに明らかになっていたCYLD発現低下によるTGFβシグナルの過剰な活性化のメカニズムとして、CYLD消失によってTGF受容体(TGFR)の安定化(分解低下)が起こり、TGFシグナルの持続的な活性化が惹起され、結果として口腔扁平上皮癌細胞の悪性化(浸潤能・遊走能上昇)に関与している可能性が示された。
【3】抗癌剤の薬剤感受性を左右するCYLDの新規標的分子の同定:口腔扁平上皮癌においては、CYLD発現低下により抗がん剤(シスプラチン、5-FUなど)の細胞内蓄積量が低下し、結果として抗がん剤耐性を獲得している可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、腫瘍組織におけるCYLDの詳細な分子機能動態を明らかにし、CYLDの観点から難治癌の治療戦略開発に新たな道を切り開くことを目的としているが、本年度の結果から、【1】CYLD発現低下の要因として、腫瘍組織に多く存在する低酸素環境によるmicro RNAや転写因子の発現変動が関与していること、【2】CYLD発現低下に要よる悪性化形質の獲得には、TGFβなどの細胞シグナルの活性化に必要なシグナル分子の異常な挙動が関係していること、【3】CYLD発現低下による抗がん剤耐性の獲得には、抗がん剤の細胞内蓄積量の低下が一部関与していること、などの成果が明らかとなっており、次年度以降計画している分子動態解析を遂行する上で十分な知見が得られている。

今後の研究の推進方策

本年度得られた研究結果・知見を基盤とし、各項目の今後の研究推進方策として、
【1】低酸素により惹起されるmicro RNAや転写因子の発現変動とCYLD発現消失との関連性の解明
【2】CYLD発現低下により挙動の変化する各種シグナル分子の同定、相互作用メカニズムの解明
【3】CYLD発現により変動する薬剤トランスポーターやアポトーシス関連因子の同定と感受性との関連性の検討
上記1-3の項目を実施し、腫瘍組織におけるCYLDの臨床的意義の解明・分子動態の解明を継続して遂行していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、細胞培養を用いたCYLDの発現の in vitro の機能解析が中心であったため、多くの抗体が必要となる患者組織を用いた解析(免疫組織染色など)、LC-MS/MSを用いたプロテオーム解析などの実施ができなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度は、これまでのin vitroの解析結果をもとに、CYLD発現低下の臨床的意義の解明・検証を目的とし、患者組織を用いた検証(免疫組織染色など)、LC-MS/MSを用いたプロテオーム解析を実施する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Georgia State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Georgia State University
  • [雑誌論文] 悪性腫瘍組織における腫瘍抑制遺伝子CYLD発現消失の臨床的意義2016

    • 著者名/発表者名
      城野博史
    • 雑誌名

      臨床化学

      巻: 45 ページ: 120-126

  • [雑誌論文] An oncofetal antigen, IMP-3-derived long peptides induce immune responses of both helper T cells and CTLs.2016

    • 著者名/発表者名
      Hirayama M, Tomita Y, Yuno A, Tsukamoto H, Senju S, Imamura Y, Sayem MA, Irie A, Yoshitake Y, Fukuma D, Shinohara M, Hamada A, Jono H, Yuba E, Kono K, Yoshida K, Tsunoda T, Nakayama H, Nishimura Y
    • 雑誌名

      Oncoimmunology

      巻: 5 ページ: e1123368

    • DOI

      10.1080/2162402X.2015.

    • 査読あり
  • [学会発表] 臨床病態解析に立脚した革新的がん薬物療法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      城野博史、齋藤秀之
    • 学会等名
      日本薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
    • 招待講演
  • [学会発表] 臨床分子病態解析に基づく難治がんの個別化治療の確立2016

    • 著者名/発表者名
      城野博史
    • 学会等名
      第33回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      2016-12-03 – 2016-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] 乳癌における腫瘍抑制遺伝子CYLD発現消失の臨床的意義の解明2016

    • 著者名/発表者名
      城野博史、林光博、神力悟、安東由喜雄、岩瀬弘敬
    • 学会等名
      ・医療薬学フォーラム2016/第24回クリニカルファーマシーシンポジウム
    • 発表場所
      滋賀
    • 年月日
      2016-06-25 – 2016-06-26

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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