研究課題
本研究は、末梢味覚の生理現象の包括的理解の為の新しい技術的基盤の構築とこれによる塩味受容機構解明を目指し、以下の項目の達成を目的としてスタートした。(1)遺伝子工学的・化学合成蛍光イオンインジケータによる味蕾組織中の味細胞応答記録法の構築(2)塩味の受容・処理・統合機構の体系的解析(1)について、エレクトロポレーションによるCalcium Greenの導入・ウイルスベクターを用いた遺伝子工学的カルシウムインジケータGECIタンパクのin vivo遺伝子導入・GECIタンパクを特定の味細胞に発現する遺伝子改変マウスの作出など、様々な方法で蛍光イオンインジケータを生きたマウスの味細胞へ導入する方法を試みた。その中で、外来遺伝子をin vivoの味細胞へ導入する方法をアデノ随伴ウイルスベクターを用いて世界で初めて開発し、論文発表を行った。しかし、味細胞からのカルシウム濃度測定には遺伝子改変マウスを用いるアプローチが最も感度・効率の点で優れていた。Calhm1-Cre;Rosa26-LSL-GCaMP6sマウスおよびaENaC-Cre;Rosa26-LSL-GCaMP6sマウスの味蕾においてはそれぞれ、Calhm1発現細胞およびaENaC発現細胞に特異的に高感度GECIであるGCaMP6sを安定的に発現しており、味刺激によって味細胞内のカルシウム応答を記録することができた。(2)について、味蕾における塩味の受容は大きく分けて2つの経路が知られており、上皮型ナトリウムチャネルを介するA経路と、それ以外の未知の受容体を介するB経路が知られている。また我々は甘味・苦味・旨味・B経路の塩味について、味蕾から味神経への神経伝達物質ATPの放出を担うイオンチャネルのコア分子がCALHM1であることを明らかにした。本研究で、CALHM1とそのパラログCALHM3が新規ヘテロメリックイオンチャネルを形成し、味細胞のATP放出チャネルを構成していることを明らかにした。本研究成果は塩味の神経伝達の分子機構の一端を明らかにしたものである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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