研究課題/領域番号 |
26713009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 和弘 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 准教授 (00548521)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ストレス / 自律神経 / 褐色脂肪組織 / 神経回路 / 体温調節 / 光遺伝学 / 大脳辺縁系 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
本研究は、心理ストレスが自律神経系などの生体恒常性維持システムに作用する脳内メカニズムを個体レベルで解明することを目的とする。研究代表者はこれまでに、ストレス性自律生理反応の惹起を担う、視床下部背内側部から交感神経系への神経伝達路を解明した。そこで今年度は、これまでに新規に確立した、特定の脳領域間を連絡する投射ニューロンを特異的にin vivoで光操作する技術などを駆使し、大脳辺縁系などの高次脳領域から視床下部背内側部へストレス信号を伝達する神経経路とその伝達機構を解明すべく実験を行った。その結果、大脳皮質系の一部と大脳辺縁系の一部において、局所刺激によって褐色脂肪熱産生が惹起される脳部位を発見した。この部位から視床下部背内側部への神経投射を特異的に光刺激すると熱産生反応が惹起された。また、この部位に薬物注入を行うことで神経活動を抑制すると心理ストレスによる熱産生反応と体温上昇が抑制された。これらの実験結果は、心理ストレス性自律生理反応の惹起において視床下部背内側部へストレス信号を入力する上位の脳領域を直接機能的に同定することに初めて成功したものである。本研究の成果は、高次精神機能が恒常性維持機構に影響を及ぼすメカニズムの核心部についての知見を与えるだけでなく、様々なストレス疾患の病態解明にも貢献しうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度となる今年度のうちに、視床下部へストレス信号を入力し、ストレス性の交感神経反応を駆動する上位の脳領域候補の同定に成功し、次年度に実施予定であった、in vivo光刺激実験を前倒しで実施することによって、この上位の脳領域から視床下部背内側部への直接の神経連絡が自律生理反応を駆動することを直接的に証明することに成功した。こうしたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
視床下部背内側部へストレス信号を入力する上位の脳領域とその神経連絡についての枠組みを明らかにすることができたので、今後は、その神経連絡に関わる神経伝達物質やニューロン群の組織化学的特徴などの詳細な解析を行い、データをまとめていくことで、早急な論文発表にこぎつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関を平成27年4月1日付で京都大学から名古屋大学へ異動することとなり、動物の飼育数を平成26年度末に大きく減少させたために、その飼育コストが計画よりも少なくすんだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
名古屋大学へ異動後、研究室のセットアップに資金が必要となるため、この余剰額はそのセットアップにおいて必要となる消耗品類の購入に使用する。
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