研究課題/領域番号 |
26713011
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
川根 公樹 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (60362589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞死 / 上皮細胞 / 腸管 / 小腸 / 細胞脱落 |
研究実績の概要 |
上皮細胞は組織から脱落してその一生を終える。死ぬべき細胞は隣接細胞が生み出す力により押し出され、組織から脱落する。本研究は、腸上皮のターンオーバーでの脱落を対象に、以下のアプローチを用いて脱落の分子機構の解明を行うものである。(A) 時間経過が細胞にもたらす変容をオミクス解析により明らかにし、寿命を迎えた細胞に何がおこり脱落のタイミングが決定されるかを明らかにする。(B) 脱落運命の決定された細胞はどのように隣接細胞に感知され、隣接細胞はどのように細胞を押し出すためのアクチンリングの形成を開始するかを明らかにする。ここではショウジョウバエにおいて新規RNAiスクリーニング系を用いる。(C) アクチンリングのどのような動態変化が力を発生して細胞を押し出すのか、その際細胞間接着がどのように喪失、再形成されるかをマウス腸培養組織、オルガノイドを用いたライブイメージングによって解明する。 H27年度実績の内、特に(A),(B)について記載する。 (A) マウス小腸の組織切片を用い、細胞脱落のおこる絨毛頂端部と、細胞脱落のおきないその下部においてマイクロダイセクションを行い、マイクロアレイによって遺伝子発現の比較解析を行った。現在、解析結果を精査し、脱落に関与する可能性のある候補分子の抽出を行っている。 (B) 私の樹立したシステムは優れたスクリーニングツールとなることをH26年度までに確認したが、行程に時間と労力がかかることを考慮し、H27年度では、一次スクリーニングに別法を用いることを計画した。この方法は、腸上皮細胞で誘導した各RNAiの効果を細胞数や細胞の形態などの複数パラメーターで評価するもので、交配等にかかる時間と労力が初期案と比べて軽減する。この代替法を用いるのに必要な系統の構築及び検証実験を行い、実際にこの系がワークすることを確認した。続いてこれを用いて一次スクリーニングを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要の欄に記載したように、研究計画(B)において一部計画を修正したため「(3) やや遅れている」の区分としたが、速やかに代替法の構築と検証を行い、一次スクリーニングを開始した。また、(A),(C)に関しては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、研究実績の概要の欄に記載した(A)-(C)のアプローチに対し、以下のように研究実施を計画する。 (A) H27年度にマウス腸上皮を用いて行ったマイクロアレイ解析の結果を分析し、細胞脱落に関与する可能性のある遺伝子を抽出する。続いて、各候補遺伝子の腸上皮での発現パターンをin situ hybridizationで解析する。さらに、各遺伝子の機能解析をいくつかの実験系で試みる(培養細胞やオルガノイドなど)。また、ショウジョウバエ腸上皮を用いた同様のオミクス解析も計画する。 (B) H27年度に開始したスクリーニングを継続する。候補遺伝子アプローチとランダムスクリーニングを並行させ、700系統(遺伝子)の一次スクリーニングを計画する。 (C) マウス腸オルガノイドの実験系において、分子動態 (アクチンやミオシンなどの細胞骨格タンパク質やカドへリンなどの接着タンパク質)をイメージングするためのプローブを用い、細胞が脱落する過程でのこれらの動態を解析する。また、並行してオルガノイドでの細胞脱落を定量する実験系の構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体、培養試薬等の物品 (消耗品)に、他の研究課題と共通で使用するものがあり、それらの一部を他の研究資金で購入出来た。また、ショウジョウバエライブラリーを用いたスクリーニングのシステムの改良を行ったため、実際のスクリーニング開始が予定より数ヶ月遅れ、本年度のライブラリー購入に係る経費が少額となった。これらの理由により、本年度は、実施が可能となったスクリーニング実験を迅速かつ大規模に進めるため、上記の額について、本年度よりも次年度に使用することが望ましいと考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ショウジョウバエライブラリーを用いたスクリーニングを大規模に実施するため、ショウジョウバエ各系統の購入費、これらの飼育、維持費が必要となる。繰越額をこれにあて、またアルバイトを雇用してこの実験に参画してもらうことで、次年度のスクリーニング実験がより迅速に進展することが期待出来る。
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