上皮細胞は組織から脱落してその一生を終える。死ぬべき細胞は隣接細胞が生み出す力により押し出され、組織から脱落する。本研究では以下のアプローチを用いて脱落の分子機構を解析した。(A)網羅的解析により、脱落のタイミングを決定する機構を明らかにする。(B)脱落運命の決定された細胞はどのように隣接細胞に感知され、隣接細胞はどのように細胞を押し出すための作用を開始するかを、ショウジョウバエにおけるRNAiスクリーニングによって明らかにする。(C)細胞骨格のどのような動態変化が細胞を押し出すのか、その際細胞接着がどのように変化するかをライブイメージングによって解明する。 (A)前年度までに、マウス小腸絨毛の基底、中間、頂端部における遺伝子発現の比較解析及び、樹立した、細胞脱落が減少する培養細胞のRNAseq解析を実施した。本年度は細胞脱落が減少するショウジョウバエの腸上皮のRNAseq解析を実施した。結果、細胞脱落に関与する可能性のある遺伝子を抽出し、様々な細胞脱落の解析系において検証を開始した。 (B)前年度までに500遺伝子のスクリーニングを行い、本年度はさらに300遺伝子のスクリーニングを行った。結果、膜動態に関与する遺伝子が細胞脱落に重要であることがわかり、これら遺伝子をノックダウンした培養細胞では細胞脱落が妨げられることがわかった。 (C)前年度までに、細胞脱落時の接着結合及び密着結合の動態を明らかにし、その際に各接着分子が細胞境界から消失する機構は、カベオリン依存エンドサイトーシスであることを示唆する結果が培養細胞を用いて得られたことを踏まえ、本年度は、ショウジョウバエ生体上皮でエンドサイトーシスを阻害したところ細胞脱落が妨げられることがわかった。また、培養細胞を用いてデスモソームの動態を解析し、デスモソームは脱落開始後の早い段階で消失することがわかった。
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