研究課題/領域番号 |
26713012
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓也 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助教 (70599505)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精子形成 / 精巣 / セルトリ細胞 / オルガノイド / 器官培養 |
研究実績の概要 |
精巣は、精細管と呼ばれる管状構造の組織を主体とした臓器で、精子形成はその精細管内部で行われる。精子幹細胞から精母細胞となり減数分裂を行って、精子細胞そして精子へと分化する。器官培養法によって精子幹細胞から精子へ至る精子形成過程の全てをin vitroにおいて進行させることに成功している。器官培養はマウス個体から採取した精巣に依存しているため、その実験には多くのマウスの犠牲が必要なってしまう。本研究では、多能性幹細胞(ES細胞)から体外精子形成誘導が可能な人工臓器、すなわち精巣オルガノイドを作製する方法の確立を目指している。 セルトリ細胞の出現を検出するために、セルトリ細胞特異的に発現する遺伝子Sox9とDmrt1にレポーター遺伝子EGFPとtdTomatoをノックインしたデュアルレポーターES細胞を樹立した。このES細胞を使って種々の培養法を検討したところ、成長因子であるBMP7とGSK3b inhibitorを組み合わせた培地で、EGFP 及びtdTomato共陽性の細胞が、少数ながら出現することを見いだした。精巣細胞の分化誘導法をより高く精度の高いもととすべく、種々の培養条件の検討をおこなった。しかし、十分な誘導効率を達成するには至らなかった。腎臓オルガノイドの誘導方法を参考にprimitive streakを誘導した後、精巣細胞で発現している3つの転写因子をテトラサイクリン誘導システム(Tet-on)で発現させる培養法で分化誘導したところ、GFPの発現が格段に向上し、また精巣細胞のマーカー遺伝子の発現も高くなった。転写因子を発現させることで、強制的に精巣細胞へ分化誘導できたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの発生過程を模倣した分化誘導に加えて、転写因子を発現させることで、より精巣細胞らしい細胞を誘導することが分かってきた。この成果は本研究課題を達成するための突破口になると考えられる。したがって、これらの培養条件および成長因子の組み合わせなど、種々の条件を突き詰めていくことで、成功できると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、誘導した細胞の評価を行うため、精巣再構築法を用いる。これは、新生仔マウスの精巣を酵素処理により分散した浮遊細胞から再凝集塊をつくり、器官培養を行うと精巣組織が自律的に再構築され、その中で精子形成を生じさせるというものである。誘導セルトリ細胞と新生仔マウス精巣細胞を混合し精巣再構築を行って、精細管構造を構成することができるかどうか、また精子形成に寄与しうるかどうか調べ、形態的・機能的に評価する。また、いくつかのマーカー遺伝子の発現が低く、精巣細胞への分化が不十分である可能性が考えられる。今後は他の精巣細胞で発現する転写因子をTet-on発現誘導するES細胞を作製し、最適な転写因子をスクリーニングする。また、マウス胎仔の精巣形成予定領域の細胞のトランススクリプトーム解析を行い、発生過程での各種精巣細胞の遺伝子発現パターンのデータを元に、関連する成長因子や転写因子を見つける。
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次年度使用額が生じた理由 |
分化誘導した精巣細胞の次世代シーケンスによりトランススクリプトーム解析を行う予定であった。しかし転写因子を発現誘導可能なES細胞の樹立等に時間を取られたため、その解析を行う段階まで進めることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度できなかった、誘導した精巣細胞の発現遺伝子と胚発生期の精巣分化予定域の発現遺伝子を次世代シーケンスを行って明らかにする。
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