研究課題
本研究では、生命現象を蛍光二光子顕微鏡を用い高速・高解像度で手に取るように可視化する「生体二光子分子イメージングシステム」を独自に開発している。現在、達成している生体内部で秒30コマの時間解像度、回折限界の空間解像度、4色フルカラーは世界にも類をみないものであり、圧倒的に得られる情報量が多い。この、生体観察は生体をリアルタイムで三次元的に把握できる情報量の多さがアドバンテージとしてあげられるが、さらにソフトウェア解析と定量化を組み合わせ新規性を加えた。さらに、光を用いて生体に介入し反応をリアルタイムで観察・評価する、など、ただ”みるだけ”ではない、形態に機能を加えたバイオイメージングを提唱している。昨年度は新たな造血過程を生体骨髄イメージングにより明らかにしており、筆頭・責任著者としてJ Cell Biology誌の論文がアクセプトされている。我々は、生体内で最も小さい構成要素(細胞)である血小板(直径2ミクロン)を、世界にさきがけて単一細胞レベルで可視化している。さらに、骨髄イメージングにより、あらたな「破裂型造血」を証明し、急性炎症時の造血メカニズムを解明した。さらに、他のアプリケーションについても検討をおこなっている。たとえば、味覚に関しては、味蕾を生体で可視化し、味刺激に対して一個の知覚細胞がカルシウム変動する様子を、動的に捉えた。5つの味物質仮説に対しての反証を得るととともに、血流・血管透過性・味物質のとりこみの関与も明らかにている。また、視覚については、眼球は水晶体実質まで可視化可能であり、角膜細胞の損傷時の動態と再生、また、角膜輪部における血管・リンパ管・神経の詳細な構築と傷害後の変化を捉えている。今後はソフトウェアを用いた定量性・再現性の担保を行い、バイオイメージングと分子生物学の融合を目指していく。
1: 当初の計画以上に進展している
本計画では、生体を光でみるバイオイメージング技術を確立し、生活習慣病病態、特に血栓性イベント発症や、肥満による脂肪組織における慢性炎症にアプローチしている。システムは候補者が独自に開発しており、手法論的に独自性が高いだけでなく、肥満と炎症、血栓止血と炎症・組織再生のリンクを明らかにするほか、造血など新たなフィールドで、新たなパラダイムを呈示しつつあるいままで分子生物学的手法により、ある一時間・一断面でしかとらえられなかった生命現象を、動的・多次元で生体を捉えられるため、本手法への注目度は高い。光操作技術により生体にはたらきかけて反応を引き出しており、新たな形態学のありかたを明確に呈示しており、今後の進捗展開が期待される。実際に2014 Cell Stem Cell, 2014 Diabetes, 2015 J Cell Biolo, 2014 Nat Commなど多数の論文発表をおこなう他、昨年度も下記の通りの受賞を受けており、対外的評価の高さを示している。2015.2.20. 富山 総合健診医学会第43回学術大会長奨励賞 2014.12.11. 第9回 日本免疫学会研究奨励賞 2014.10.31 大阪第75回日本血液学会学術集会奨励賞 2014.6.30 Royal Micrscopy Society 2014 Scientific Imaging Competition, Short Video, 1st prize2014.6.23 Milwaukee, SSC 2014 Best Oral Awrad
2015年度は、特に生活習慣病に重要な炎症初期病態を規定する免疫・炎症性細胞の挙動に注目し、炎症機転で最初に活性化すると思われる、CD8陽性T細胞、炎症性マクロファージの活性化機構を明らかにする。また、骨髄イメージングにより血小板造血過程を明らかにしていく。さらに、肥満の原因である糖脂質過剰摂取行動の背景にある、甘み・旨み味覚刺激に対する依存形成過程を、感覚器イメージングにより明らかにする。実験動物モデルとして、慢性の糖液・人工甘味料刺激・高脂肪食負荷を行い、慢性の味覚刺激に対して末梢感覚器の閾値上昇(不応性)が生じていないか、大脳の応答パターンが変化していないか、を明らかにする。代謝臓器の免疫細胞の動態については、免疫細胞を機能プローブでラベルした高脂肪食負荷マウスを用いて骨格筋・脂肪組織イメージングに適応する。慢性炎症を背景とする局所における炎症性・免疫細胞の動態と、その賦活化・活性化・遊走の可視化等の基礎的検討を行う。特にリゾリン脂質について、受容体欠損マウスを用いて検討し、代謝パラメーターの検討に加え免疫細胞の動態を可視化する。
年度をまたぐ発注及び納品の遅れの為
来年度、物品費として使用予定
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うちオープンアクセス 7件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 備考 (1件)
Mechanisms of Development
巻: 135 ページ: 58-67
10.1016/j.mod.2014.12.001
J Cell Biology
巻: in pub ページ: n pub
Nat Commumnications,
巻: n pub ページ: n pub
Diabetes,
巻: 63 ページ: 4154-64
Thromb J.
巻: 12 ページ: e pub
Cell Stem Cell,
巻: 14 ページ: 535
http://www.invivoimaging.net/