研究課題
本申請研究は、「レジオネラ感染経路に関与するRabタンパク質の同定」、「LCVのリソソーム融合阻害機構の解析」、「レジオネラ感染に関与する小胞体サブドメインの同定」を主体に行なっており、各々の進捗状況を以下に記載する。「レジオネラ感染経路に関与するRabタンパク質の同定」においては、昨年度までLCVを小胞体へとリクルートする過程においてRab6の機能が重要であることを見いだしていたが、本年度の研究においてRab6をLCVへとリクルートする過程においてRab33bが必要であることを明らかにした。このことから、LCVへのRab6リクルート機構には、Rab33b-Rab6というカスケードが存在していることを示すことができた。「LCVのリソソーム融合阻害機構の解析」においては、昨年度までにレジオネラ感染においてRab5(ファゴソームをリソソームへと誘導する過程において重要な役割を担うRabタンパク質)がユビキチン化により分解される可能性を示していた。本年度はレジオネラエフェクターをコードする遺伝子群を欠損した種々の変異体を用いて、Rab5をユビキチン化するE3ライゲースとして働くレジオネラエフェクターをコードする遺伝子群の同定まで成功した。「レジオネラ感染に関与する小胞体サブドメインの同定」においては、昨年度までレジオネラが滑面小胞体を介して小胞体に侵入し、粗面小胞体で増殖する可能性を提案した。また、その過程においてRab4及びRab10を利用している可能性も示している。本年度は、小胞体膜タンパク質であり滑面小胞体と粗面小胞体を循環する分子であるBap31に着目して研究を行なったところ、小胞体に到達したレジオネラはBap31を有意に集めることを見いだし、またBap31の発現抑制により小胞体に到達したレジオネラが滑面小胞体から粗面小胞体へと移行出来ないことを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
「レジオネラ感染経路に関与するRabタンパク質の同定」においては、LCVへのRab6供給にRab33bと呼ばれる分子が介在していることを示すことが出来た。宿主内における小胞体への輸送経路においてRab6及びRab33bが関わっていることは明らかになっているが、この2分子の間にどのような相関性があるのかは不明である。そのような観点からも宿主内における小胞体への輸送においてRab33b-Rab6カスケードが存在している可能性を提案できる本研究内容は意義の深い内容など考えられる。「LCVのリソソーム融合阻害機構の解析」においては、Rab5の分解に関わるレジオネラエフェクターの候補を含む遺伝子群を同定できたことは、本研究を遂行するにあたり意義のある内容であると思われる。「レジオネラ感染に関与する小胞体サブドメインの同定」においては、小胞体に到達したレジオネラがBap31と呼ばれる滑面小胞体と粗面小胞体を循環できる小胞体膜タンパク質の機能を利用して小胞体内を移行していることを見いだせた点が極めて重要だと考えられる。これまで、Bap31の小胞体内循環に関して、その生理的意義は不明であったことから、レジオネラ感染を通じてBap31が宿主内で司っている生理機能にも迫ることができるのではと考えている。
「レジオネラ感染経路に関与するRabタンパク質の同定」においては、Rab33bをLCVに集積させるレジオネラエフェクターを同定する。レジオネラはRab1をLCVにリクルートし活性化することは有名であるが、その際にRab1のGEFに相当するレジオネラエフェクターを利用していることが既に明らかとなっている。そこで、Rab33bをLCVに供給させるレジオネラエフェクターをレジオネラの変異株や精製タンパク質を用いた解析により同定し、そのエフェクターがどのようにRab33bをLCVに集積させているのか(GEF活性の有無等)を明らかにする。LCVのリソソーム融合阻害機構の解析」においては、候補となった遺伝子群にコードされている各々のレジオネラエフェクターをクローニングし、Rab5に対するユビキチン化活性を検証する。Rab5特異的なエフェクターが同定された場合は、当該エフェクターのノックアウト株を作製し、レジオネラによるRab5の分解と細胞内増殖との関係を解析する。「レジオネラ感染に関与する小胞体サブドメインの同定」においては、Rab4やRab10及びBap31の機能を制御するレジオネラエフェクターの同定を目指す。重要なポイントとしてLCV上にはこれらのタンパク質が集積することを明らかにしており、この集積にはレジオネラエフェクターが関わっている可能性が強く示唆される。そこで、これらタンパク質と相互作用するエフェクターの同定を足がかりに、レジオネラによる当該タンパク質の制御機構を明らかにする。
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