研究課題
ウイルスがどの様な構造変化を伴って細胞に侵入するかはウイルス学における大きなトピックの一つであるが、詳細なメカニズムは未解明のままである。そこで、本研究では申請者らが以前より取り組んでいる麻疹ウイルスやマールブルグウイルスを主なモデルとして細胞侵入メカニズムの全容を解明すべく、X 線結晶構造解析を用いて細胞侵入の鍵となる糖蛋白質の構造を解明し、構造に基づき詳細な侵入メカニズムのモデルを提唱することを目指している。本年度はマールブルグウイルスのX線結晶構造解析に成功し、唯一の糖蛋白質であるGP蛋白質の構造を決定することに成功した。エボラウイルスのGP蛋白質の構造と合わせて、両ウイルスのどの部分が中和抗体からの弱点となっているかを原子レベルで解明し、報告した。構造はデータベースのProtein Data Bank (PDB)に登録しており、インターネットを通じて世界中の研究者に公開している(PDB ID; 3X2D)。この構造はウイルスの細胞侵入メカニズムの解明に大きく貢献することが出来るだけでなく、GP蛋白質を標的とした抗ウイルス薬の設計・開発にもつながることが期待される。また、構造に基づいたワクチン設計により安全性の高いワクチンの開発が期待される。
2: おおむね順調に進展している
細胞侵入の際に必須であるマールブルグウイルスのGP蛋白質のX線結晶構造解析に成功し、構造を決定した。また、マールブルグウイルスに対するヒト由来の中和抗体を複数単離し、抗体による感染防御効果を確認した。従って、当初の予定通り研究は進展している。
今後、ウイルスと受容体との詳細な相互作用についても物理化学的な実験を進める予定である。また、詳細な細胞侵入メカニズム解明のため、さらなる構造解析を行う予定である。
実験補助員の人材難により適切な人材の確保に時間がかかり、採用がずれ込んだため昨年度は人件費が少なくなった。また、必要試薬をキャンペーン等で大量購入し想定より安く購入できたため。
蛋白質の結晶化を進めるために必要なスクリーニング試薬やプラスチック製品の物品購入に使用する。また、前年度から採用がずれ込んだ人件費に使用する。
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Cell
巻: 160 ページ: 904-912
10.1016/j.cell.2015.01.041.
巻: 160 ページ: 893-903
10.1016/j.cell.2015.01.031.
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/app/modules/information/detail.php?i=759&c=10