研究課題
本研究では、申請者がこれまでに開発してきたマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法を基盤とした超高感度生体内化合物分析技術を先鋭化することで、創薬・医療におけるイノベーション創出に資する革新的代謝プロファイリングプラットフォームの基盤形成を目的とした。具体的には、「体液サンプルを用いた超ハイスループット代謝プロファイリング技術」、「空間情報を保持した疾病マーカー探索技術」、「標品非依存的代謝物同定技術」に関する技術開発を進め、早期診断や予後診断および適切な治療戦略の判断を可能とする疾病マーカー探索・同定プラットフォームの構築および創薬プロセスの加速化を実現する基盤技術の創生を目指した。これまでに、ヒト腫瘍検体(乳がん120検体)の凍結組織マイクロアレイを用い、腫瘍マーカーの探索を試みた。その結果、18種の代謝物が有意に腫瘍部と正常部で蓄積量が異なることを明らかとした。また、組織内のエネルギー充足率が腫瘍部において有意に高値を示すことも明らかとなった。さらに、ヒト血清・尿を用いたハイスループット代謝解析システムについても整備を進めており、簡便なサンプル調製法(有機溶媒との混合のみ)および使用するマトリックスのスクリーニングもほぼ終えている。既に特許を取得した新規マトリックスの中にも有望なマトリックスを見出している。また、実際にヒト血清を用いた場合、健常・前立腺がん・乳がん患者の代謝プロファイルから主成分分析により明確に層別化可能であることも見出している。
3: やや遅れている
ほとんどの研究内容については当初の予定通りの進捗であるが、未知バイオマーカーの同定に用いる予定であった超高分解能質量分析装置の故障により、実際のサンプルへの適用については若干遅れている。
これまでに、ヒト腫瘍検体のtissue microarrayを用いた腫瘍マーカーの探索には一定の目処は付いた。今後は、さらに検体数を拡大し、腫瘍タイプの識別や同一マーカーの体液からの検出を見据えて進めていく予定である。また、ハイスループット代謝解析システムについても基盤整備を進め、再現性も含めたより頑健性の高いシステムへとブラッシュアップさせていく。
当初予定していた機器の使用について、複数箇所の故障により実験が不可能になり、また予想外に修理に時間を要し期間内に満足に実験結果を得ることが出来なかったため、研究機関後期には共同研究者の保有する機器を使用して実験を継続したが、当初の予定通りに実験が進まなかった。そのため、残った実験の遂行に使用する予定である。
当初の予定通りに実験が進まなかったため、実験を担当していた学生の卒業に間に合わなかったため、残った実験の遂行のため実験補助者を雇用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Analytical and Bioanalytical Chemistry
巻: 409 ページ: 697-1706
10.1007/s00216-016-0118-4