研究実績の概要 |
今回は健常者47人、境界域高血糖患者87人、糖尿病患者144人の爪を用いてD/Lアミノ酸を測定を行い、かくれ糖尿診断への有用性を検証した。その結果健常者、境界高血糖者、糖尿病患者の爪よりD,L-Ala、D,L-Val、D,L-Leuが良好に検出された。また、健常者、境界高血糖者、糖尿病患者の定量値を統計解析した結果、今回測定した3種類のDL-アミノ酸の中でVal、Leuでは健常人、境界高血糖者、糖尿病患者において有意差がなかったものの、D,L-Alaのピーク面積の比においては健常者と境界高血糖者、健常者と糖尿病患者の間に有意差(p<0.01)が確認できた。また、男女別に詳細に解析した結果、男性、女性ともに健常者と境界高血糖者、健常者と糖尿病患者の間に有意差(p<0.01)が確認できた。従って、今回の結果からヒト爪中のD,L-Alaのピーク面積比は境界高血糖者の早期検出可能なバイオーマーカーとしての有用性が示唆された。 また、生活習慣病として痛風に着目し、ヒト爪中尿酸の定量分析法の開発を行った。初めに男女各3名の健常者の両手の10本指の爪を用い、各指ごとの尿酸の含量を測定し、どの指の爪を用いるのが通風診断に最も有用であるかを検討した。その結果、男性、女性ともに母指と小指中の尿酸含量は他の指に比べて含量が少ない傾向にあることが示唆された。また、示指、中指、薬指中の尿酸含量は比較的安定でばらつきも少なく、また、男性、女性ともに右手、左手の間で大きな差は無いという結果が得られた。従って、痛風の診断の臨床分析試料として爪を用いる際、左右の手の示指、中指、薬指中のいずれかを用いることが可能であることが示唆された。
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