研究実績の概要 |
今年度は大腸癌の早期診断を目的として、近年ヒト血中のメタボローム解析から大腸癌に早期反応を示す新規バイオマーカー候補物である2-Hydroxy butyrate (α-HB)、Aspartic acid (Asp)、Kynurenine (Kyn)、Cystamine (Cys)の新規バイオマーカー候補物に着目し、非侵襲的に採取が可能で保存が容易なヒト爪を使用しLC-ESI-MS/MSを用い、大腸癌診断を指向したヒト爪中の新たに光学異性体を含めた代謝物の一斉分析方法の開発を試みた。α-HB、Asp、Kyn、Cysを(S)-DBD-Pro-COClを用いて標識し、LC-ESI-MS/MSで一斉分析法を開発し、大腸癌患者、健常人の間の測定結果の有意差の検定にはマンホイットニ法を用いた。その結果、Cys、α-HB、Asp、KynをC18カラムで光学異性体を20 min以内に良好な分離 (Rs>1.57)を達成した。また、爪中から初めてAspとα-HBの光学異性体を良好に検出することに成功した。健常人36人、大腸癌患者12人の爪を分析したところ、定量値において、女性の場合、D-α-HBで、男女混合の場合、D,L-α-HBで、男性の場合L-Asp、D-Asp、L-α-HBで有意差(p<0.05)が認められ、光学異性体比では、女性の場合では有意差が認められなかったが、男女混合と男性の場合で、D/Lα-HB、D/L+D α-HB両方で、有意差(p<0.05)が認められた。また、同じ人の爪を経時的に3回測定したところ、定量値ではCV<14.8%、D/L比では<15.5%であり、同じ人の爪中の光学異性体は安定的に存在することが示唆された。
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