研究課題
増え続ける認知症の治療法および予防法の確立は急務である。認知症病態にはβアミロイド(Aβ)蓄積やタウ蛋白病変(以下、タウ)などが密接に関与すると考えられており、創薬分野における標的分子となっている。これらの分子を標的とした治療薬の開発には、ポジトロン断層撮影(PET)などの画像技術を用いたヒト生態での薬効評価形の確立は不可欠である。既にAβを標的とした治療薬はPETによる評価形が確立しているが、これまでのところAβ標的薬は期待された効果が得られていない。一方タウを標的とした治療薬は、今までにヒト生態における薬効評価系が存在せず、開発が進んでいなかった。ヒト生態における画像技術によるタウ蛋白病変の可視化技術は、今まで確立したものはなかった。最近われわれは、Alzheimer病(AD)ならびに非AD性認知症のタウへの高い結合性と選択性を示す新規PET薬剤である[11C]PBB3を開発し、[11C]PBB3 PETで評価したタウの集積程度や分布が、神経障害に密接に関与する可能性があることを示した。本研究の目的は、PETにおり各種認知症のタウと神経障害の関連を解明し、認知症の客観的な重症度評価指標を確立することである。我々は平成28年度に、AD、非AD性認知症、軽度認知機能障害、健常者を対象に、PETおよびMRT検査、臨床神経学的評価、認知機能評価を行った。さらに平成27年度までに確立した、[11C]PBB3 PETにおける簡便で妥当な解析法を用いたPETデータの解析を行い、タウPETで評価したタウ蓄積がADにおける客観的な重症度評価指標となり得ることなどを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画時点で想定した以上に順調に被験者募集、検査、データ解析が進んでいる。これまでの解析結果でも、前年度までに確立した最適な解析法を用いたデータ解析を行い、タウPETで評価したタウ蓄積がアルツハイマー病における客観的な重症度評価指標となり得ることなどを示し、英文誌に論文報告をすることが出来た。
次年度はさらに検査症例数を増やし、脳内タウ蓄積と臨床症候との関連や、非アルツハイマー病性認知症における重症度評価法についても見当をする予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 5件、 招待講演 20件)
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