研究課題/領域番号 |
26713036
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
桐野 洋平 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (50468154)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ベーチェット病 / 脊椎関節炎 / ERAP1 / HLA-Class I |
研究実績の概要 |
遺伝学的解析の進歩は脊椎関節炎でもめざましい。Mollらは1974年にベーチェット病(BD)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(AS)などを包含する「脊椎関節炎」という疾患概念を提唱した。これらの疾患では、眼、皮膚、関節などの多彩な臓器に慢性的な炎症を来たす。その後、脊椎関節炎ではMHC-Class I(BDではB*51、乾癬ではCw06、ASではB*27)が疾患の最も強い遺伝素因であることが判明した。さらにゲノムワイド関連解析(GWAS)により次々に新しいnon-MHCの感受性遺伝子も報告され、BD、AS、乾癬には臨床的共通点だけでなく、遺伝学的にも共通点が多いことが明らかになってきた。特にERAP1、IL23Rは脊椎関節炎を特徴づける重要な感受性遺伝子と考えられており、BD、ASなどを「MHC-class-I-o-pathy」と呼ぶことが提唱され、共通した治療戦略が期待されている(McGonagle et al, Nat Rev Rheumatol, 2015)。BDの疾患感受性遺伝子としてすでに確立しているHLA-B*51、ERAP1がどのように疾患に関わっているのかは不確定である。本研究では機能解析を通じて脊椎関節炎の新規治療法を開発する。特にHLA-Class Iへの抗原提示過程が、疾患のリスクとなるERAP1多型によりどのように影響を受けて疾患発症に関わっているのかをマウスモデルを用いて解明し、この過程を阻害または調節することが脊椎関節炎の疾患特異的治療法となり得るか検討する。HLA(MHC)は、関節リウマチ、クローン病などの炎症性疾患や、移植や癌免疫においても最も重要な分子と考えられているにも関わらず、解析の複雑さゆえに、HLAを標的とした治療法は開発されていない。本研究ではERAP1というHLA-Class Iのペプチド提示過程に直接関係する分子の機能解析を目的としており、「MHC Class-I-o-pathy」にとどまらず、HLAを介した他の疾患への治療応用の可能性も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ようやくERAP1ノックアウトマウスが完成した。当初はこのERAP1ノックアウトマウスに、ベーチェット病のGWASで見いだされたERAP1 R725Q/D575Nの2つのSNPのみを組み込んだマウスを作成する予定であったが、その後ERAP1は9つのcoding variantが多型として存在し、この組み合わせによって約10種類のアロタイプが存在することが判明した(Ombrello et al, Curr Opin Rheumatol, 2015)。そこでベーチェット病のリスクとなるヒトERAP1アロタイプ(Hap10と呼ぶ)と、保護的になるERAP1 Hap2(強直性脊椎炎のリスク)の2種類のベクターを構築し、現在ノックインマウスを作成中である。完成後、フェノタイプ解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ERAP1ノックアウトマウス、ERAP1 Hap2/10ノックインマウス作成中である。本年度中にフェノタイプ解析を行いたい。さらにHLA-B*51/ヒトb2-MGノックインマウスとの交配を行い、実際のベーチェット病患者で強い発症リスクとなるHLA-B*51/ERAP Hap10の遺伝学的環境下でのフェノタイプの変化を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在ERAP1ノックインマウスの作成中であり、機能解析に至っていないこと。
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次年度使用額の使用計画 |
ERAP1ノックインマウスが作成でき次第、本研究費を用いて繁殖・機能解析を行う。
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