研究課題
ベーチェット病のゲノムワイド関連解析によって見いだされたERAP1は、HLA-B51と遺伝子相互作用を示すことから、疾患発症の根源に関わる分子と考えられる。また他の類似した炎症性疾患である乾癬、強直性脊椎炎でも同様の現象が認められている。本研究ではベーチェット病と関連するR725Qを含むERAP1のアロタイプがベーチェット病の発症にどのように関係しているか明らかにすることを目的としている。方法:本年度、ERAP1の遺伝学的解析を進め、ベーチェット病の発症と最も強く関連するアロタイプ「Hap10」を見出し、論文化した(Takeuchi,Kirino et al, Ann Rheum Dis,2016)。このHap10をホモで保有する個体は、HLA-B51を保有することでベーチェット病発症のリスクが12倍に増加することが判明した。本知見を基に、このHap10を含む遺伝子改変マウスを作成し、ヘテロの作成は完了している。遺伝学的解析の他に、ベーチェット病の疫学的解析もおこない、ベーチェット病患者の臨床症状が変化していることを報告した(Kirino et al, Arthritis Res Ther, 2016)。この解析によると、HLA-B51陽性患者は経時的に減少しており、逆に腸管型ベーチェット病の患者が増加している。何らかの環境因子の変化により、HLA-B51依存性のベーチェット病患者発症が減少しているのかもしれない。考察:Hap10と、強直性脊椎炎のリスクとなるHap2を含むマウスを作成している。また、ERAAP1欠損マウスも作成完了している。今後これらのマウスの機能解析を進めて、ベーチェット病の発症メカニズムを明らかにする。ベーチェット病の発症には、さらに細菌感染などの何らかのトリガーが存在している可能性がある。菌体抗原での刺激によって、これらのマウスのフェノタイプになにか差が生じるかを観察したい。
2: おおむね順調に進展している
ベーチェット病の発症と最も強く関連するアロタイプ「Hap10」を見出し、論文化した(Takeuchi,Kirino et al, Ann Rheum Dis,2016)。さらに遺伝子改変マウスも順調に繁殖している。
次年度はERAP1遺伝子改変マウスの機能解析を進めて、データを収集する。実際にHLA-B51とどのように共同作用を発揮しているかが重要であり、さらにHLA-B51ノックインマウスとも掛け合わせて、ERAP1-HLA-B51の分子的関係性を明らかにしたい。
H28年度はERAP1のHap10マウスの作成を開始しており、ヘテロマウスが作成できた段階である。H29年度中に繁殖をさらに促進して資金が必要なことから、次年度へ繰り越した。
マウスの繁殖を開始しており、繰り越した費用を用いて解析を進める。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
Ann Rheum Dis
巻: 75 ページ: 2208-2211
10.1136/annrheumdis-2015-209059
Arthritis Res Ther
巻: 2016 ページ: 217
10.1186/s13075-016-1115-x
炎症と免疫
巻: 24 ページ: 5