研究課題
・小児急性リンパ性白血病の包括的構造解析:予後不良因子であるT細胞性急性リンパ性白血病に注目し、全エクソン解析/RNA構造解析を施行した。すでに知られているSIL-TAL1転座に加え、TAL1のsuper enhancer変異、MYBの変異などをあわせて、全症例の約30%でTAL1-MYB経路の活性化が生じていることが示唆された。この経路はT細胞性急性リンパ性白血病の病態を形成していると考えられた。また、小児急性リンパ性白血病において、これまでに報告されていない新たな融合遺伝子を特定した。この融合遺伝子は細胞の分化にかかわる転写因子であり、さらに予後不良群の抽出に有用であった。病態との関連について細胞への影響を検討している。・小児急性骨髄性白血病の包括的構造解析:典型的な経過をとらない小児急性骨髄性白血病に限定して、集中的に全ゲノム解析を施行した。その結果、これまでに報告のない新規転座を特定した。転写因子を含むこの転座は病態に関与していると考え、現在、機能的な解析を施行中である。・小児急性リンパ性白血病に合併したランゲルハンス組織球症の分子病態:小児急性リンパ性白血病の発症と前後してランゲルハンス組織球症(LCH)を発症することがあり、病態の関連が示唆されていた。この2者が合併した症例を3例収集し、集中的に全エクソン解析を施行し、KRASやNOTCH1、CREBBPなどの変異を持つクローンが共通の基盤となって発症していることを特定した。その成果をKato M et al. Br J Haemaotol 2015Nov 5[Epub ahead of print]に報告した。
2: おおむね順調に進展している
症例集積も順調であり、詳細なゲノム解析が病態の理解に有用であることを示す論文報告を行うことができた。さらに、複数の病型において新規の構造異常を特定できており、これらの成果は診断や層別化、治療標的へと応用しうることが期待される。
昨年度に特定した新規の転座について、特に転写因子やキナーゼを含むものに注目して、分子生物学的な機能解析を遂行する。また、小児白血病の病態の理解には、後天性の獲得性変異だけでなく、先天的な遺伝子情報の背景が関与していることが推測されるため、後天的な変異・生殖細胞系列の異常の両者を統合して解析し、病態の理解をさらに深めることを目指す。
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British Journal of Haematology
巻: Nov 5 ページ: 印刷中
10.1111/bjh.13841