本年度は、パッチ状三次元化した組織型パッチを各時系列で、細胞外マトリックスの産生能などを解析した。ヒト血管内皮細胞および血管平滑筋細胞、ヒト皮膚繊維芽細胞など、心・血管を構成している主たる細胞を用いて、三次元化した組織型スフェロイド(細胞凝集塊)を形成。大量の血管組織型スフェロイドを立体構築して血管壁構造もしくは円筒形の血管構造体を作成した。構造体をDay1、Day3で固定し血管を構成する細胞外マトリックスなどの組織学的評価を行い、心筋組織や動脈と、形態、タンパク質発現の有無、分布などを画像評価、比較した。比較する事で真の心臓・血管組織に必要なタンパク質発現の有無、発現条件などを模索するのが目的である。 解析項目はHE染色、マッソン染色、EVG染色、コラーゲンTypeⅠ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅶ、αSMA、vWfを染色解析した。Day1、Day3のグラフト内には、細胞周囲にコラーゲンのⅠ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの発現を認めた。少量かつ正常な血管と比較し分布も日規則的であった。また、内皮細胞は、内皮として血管構造体の内膜を裏打ちするようには分布せず、構造体の内部に未熟な血管網構築をするように分布した。 αSMAの産生も、内胸動脈と比較すると明らかに不足していた。 細胞のみから、三次元化した心血管パッチの作成方法を開発した。簡便な操作で心臓型パッチや、血管型パッチ、あるいはそれらをさらに簡便に加工することで得られる円筒形の血管型組織を細胞のみで作ることに成功し、三次元化した構造体は作成後数日で、細胞外マトリックスの産生はみとめるものの、まだまだ条件検討が必要であった。今後の課題としてサイトカイン添付・条件検討、シェアストレスなどの負荷により、構造体は生物学的活性を発現させさらに成熟させる技術が必要と考える。
|