研究課題
現在、骨軟部腫瘍の治療で広く用いられているドキソルビシンおよび最近軟部肉腫に対する使用が承認された薬剤であるパゾパニブやエリブリンに対して、薬剤耐性を示す細胞株の作成を行った。おもな骨軟部腫瘍由来の細胞株である滑膜肉腫細胞株、脂肪肉腫細胞株、悪性末梢神経鞘腫瘍細胞株などを用い、細胞株への薬剤の反復投与を行い、複数の薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株の樹立に成功した。なお、新規薬剤耐性株の樹立に向け、実験を継続的に行っている。樹立された薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株を用いて、同一の細胞株で薬剤耐性獲得前の細胞株と薬剤耐性獲得後の細胞株において、それぞれにおける遺伝子およびタンパクの網羅的発現解析を行い、薬剤耐性に関与する遺伝子およびタンパクの分析を行った。同解析にて複数の候補分子が同定され、その中から新規性のある分子、過去に薬物耐性への関与が報告されている分子など注目すべき分子を選択し、複数の候補分子について、より詳細な解析を行っている。そのなかで、滑膜肉腫のパゾパニブ耐性株を用いた研究により、その薬剤耐性メカニズムの解明に成功し、英文雑誌に発表した(Yokoyama N, Matsunobu T, Matsumoto Y, Fukushi J, Endo M, et al. Sci Rep 2017)。その研究では、薬剤耐性獲得にはDUSP6のdownregulationを介したERK1/2の活性化が関与しており、MEK-ERK inhibitorによるパゾパニブ耐性克服の可能性が示唆された。細胞株での実験結果と実際の臨床データ、すなわち、検体(腫瘍切除標本)での遺伝子・タンパク発現と抗がん剤の臨床効果の関連性を検証することを念頭に、パゾパニブを使用した軟部肉腫患者の臨床データおよび臨床検体のデータベース化を行っている。
2: おおむね順調に進展している
薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株の樹立に関して、当初、実現可能性が危惧されたが、さまざまな組み合わせで抗がん剤と細胞株を用いて実験を行ったことが幸いし、複数の薬剤耐性細胞株の樹立に成功しており、薬剤耐性に関与する分子生物学的機序の解析を進めることができているため。また、研究成果の一部を英文論文化し、発表することができたため。
樹立された薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株を用いて、その薬剤耐性獲得に関与する分子の同定を試みた実験を継続する。遺伝子レベル、およびタンパクレベルでの網羅的発現解析によりピックアップされた分子について、その発現の再確認や分子生物学的役割について詳細に検討を行う。また、基礎実験データと臨床データの相関性の検証のため、臨床データの収集・解析を継続する。
当初予定していた実験用物品の購入が不要となったため。
基礎的研究データを裏付ける臨床データおよび臨床サンプルのデータベース化を計画進行中であり、そのプラットフォーム作成や人件費として用いる予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 13件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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