褥瘡の発生予測は予防ケア開始のために必須であるが、現在の予測方法は間接的な褥瘡発生要因に基づいて作成されており、在宅の超高齢者における多種多様な身体状況に対応することは極めて困難である。そこで褥瘡発生メカニズム(低酸素・再灌流障害・リンパ灌流障害・細胞変形)に基づく新しいアセスメント方法に着目した。つまり、褥瘡が顕在化する前に生じるこれらの病態を経皮的に検出することができれば、最も正確な褥瘡発生予測となると着想した。本研究の目的は不顕性変化を工学的・分子生物学的手法により皮膚局所で捉える新たな褥瘡発生予測技術を提案し、もって褥瘡発生低減による在宅療養者のウェルビーイング向上を目指すものである。 これまでに作成したモデルマウスを用いて、皮膚局所で起こる現象を詳細に検討し、バイオマーカー候補を絞り込んだ。複数種類のバイオマーカーを見出し特許申請および論文作成を行うとともに、バイオマーカーの検出キット化を目指して、工学系研究者とのディスカッションを通じて製品のコンセプトを立案した。また、リンパ管障害関連バイオマーカーについては、その発現メカニズムが不明であることからそのメカニズム検証のため、リンパ管新生阻害実験を行った。その結果、リンパ管新生を阻害することで、軽度の圧迫によっても褥瘡が発生することが示された。以上より、リンパ管障害が褥瘡発生に寄与することを証明するとともに、バイオマーカーの適切性について検証した。
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