研究課題/領域番号 |
26713059
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成瀬 昴 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90633173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域看護学 / 医療経済 / 在宅医療 / 訪問看護 |
研究実績の概要 |
<概要> 文献レビューとヒアリングを行い、STの効率性測定の前提条件として、ST利用者の訪問看護の必要度を判定する簡便な指標が必要であることを特定したため、海外の既存尺度(CHIRS)の日本語版作成を行った。 <1:文献レビューとヒアリング> 国内外の医療・介護サービス提供機関の効率性測定、およびパフォーマンス評価に関する文献をレビューし、効率性測定方法を体系的に整理した。さらに、東京都内の2STの経営者・管理者へのヒアリングを行った。これにより、STの効率性測定の前提条件として、利用者の訪問看護重症度を調整する必要があることがあることを特定した。 <2:ST利用者の訪問看護の必要度を判定する指標の開発> 訪問看護利用者の身体的重症度等から、その必要性の高さを判定する指標が必要であると判断したため、まずはアメリカとトルコですでに活用されている訪問看護必要性判定指標(CHIRS)の翻訳を行った。原作者に許可を取り、日本語版の尺度項目に修正してみた。これは、訪問看護師が、利用者の心身の状況を定期的に評価するための項目群で、原版は24領域、約600個の項目からなる。この中から、訪問看護経験のある研究者、およびSTに勤務する看護師4名との討議の結果、①日本の制度の中で提供している訪問看護にそぐわない尺度、②日本の訪問看護では入手不可能な評価項目を除外した10領域の68項目を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、訪問看護の効率性測定に重要な変数を特定できており、その評価指標を作成する具体的な手順(指標案の作成、作成のための調査施設への調査説明と内諾取得)まで進んでいるため。 文献レビューおよび専門家へのヒアリングから、平成27もしくは28年度、ST内のチームワークがSTの効率性に影響するプロセスを記述する際に、訪問看護の必要性の高さを調整できていることが非常に重要であると考える。 最終的に明示すべき研究課題の探究のために、初年度は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
<1:利用者の訪問看護必要度を測定する指標の開発>訪問看護利用者の身体的重症度等から、訪問看護サービスの必要性の高さを判定する指標として、海外の訪問看護必要性判定指標(CHIRS)の翻訳を行い、日本の訪問看護現場で活用可能と考えられる10領域の68項目を選定した。今後はまず、これら68項目の評価内容が日本の訪問看護の必要性の高さを予測しうることを確認するため、東京都内2STでカルテ調査を訪問看護師への質問紙調査を行う。これにより、日本で訪問看護利用者の訪問看護必要度の高さを数値化しうるような指標を開発する。 <2:訪問看護利用者の訪問看護必要度がSTのパフォーマンスに与える影響の評価> 指標の完成後は、10か所以上のSTを包含する市町村を1~2か所選定し、ST利用者の特性(本研究で作成した訪問看護必要度の高さ)が、STのパフォーマンス、アウトプットに与える影響を明らかにする。現在、九州の1都市(人口約30万人、ST27か所あり)から調査内諾を得ている。 <3:訪問看護師と同僚看護師・他機関職員とのチームワークが、STの効率性に影響するぴプロセスの仮説理論の生成・検証><2>の調査と合わせて、STの訪問看護師(もしくは訪問看護管理者)と周囲とのチームワークが、STのパフォーマンスに与える影響を評価する。この時、STの利用者の特性を調整する。
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次年度使用額が生じた理由 |
訪問看護ステーションを対象に、その生産物を定性的指標・定量的指標の2側面からとらえることを目的にした研究の中で、初年度には、STへの質問紙調査等ではなく、自動的に運営実績から上記指標を抽出し、研究者が任意に集計・効率性測定できるようなデータ管理システムを開発することを予定していた。 しかし、データ管理システムの開発よりも、システムで観測すべき指標の特定に時間を要したため、システム開発に使用する予定だった委託費(50万円)、および関連する物品購入・通信にかかる費用を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に予定していた、データ管理システムの開発に着手する。システム開発に必要な物品購入・通信、および調査に使用する予定である。
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