NPの量子版であるQMAにおいては、証明者は無限の計算能力を持ち、検証者はBQPの計算能力を持っている。ところが、セキュアクラウド量子計算への応用を考えた場合には、検証者の能力はBQPではなくて理想的にはBPP、そうでなくても高々ほぼBPPにしたい。その目的のために、本年度は、検証者の計算能力を弱める方向での検討を行った。その結果、検証者がClifford gateのみしか実現できない場合、あるいは1キュービット測定しかできない場合でも、計算量クラスが変わらないことを示した。Clifford gateのみの量子計算はGottesman-Knillの定理により、古典計算機で効率的にシミレートできるため、ほぼBPPであると考えてよい。また、似たような理由により、1キュービット測定の能力もそうである。したがって、当初の目的であるBPPの検証者にちかづけることができた。また、トラップを隠して計算の検証をする方法については、以前から研究しているが、こちらについても引き続き検討し、実際に可能であることを示した。特に、測定型のセキュアクラウド量子計算で可能であることが初めて証明された。また、ウィーン大学の実験グループと打ち合わせを行い、その理論プロトコルは、実際に彼らの実験室の光量子計算機を用いて実演も行った。その際には、技術的制約により4キュービットまでしか実現できなかったが、今後、可能なキュービット数を増やしていく予定である。
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