研究実績の概要 |
個人配分問題の例として,マッチング問題の特殊ケースである物々交換に着目し,各参加者が虚偽の表明をするインセンティブを持たない交換アルゴリズムが設計できるための条件について考察した.具体的には,全ての参加者の選好が,財に関する共通の順序に基づいていても,加法的拡張 (additive extension) と呼ばれる形式で決定されている場合には,参加者が虚偽表明のインセンティブを持たないようなアルゴリズムは設計不可能であることを示した.また,ケーキ分割問題関しても議論を行い,自然な仮定のもとでダミー入力への耐性と公平性が両立しないことを示したほか,弱めた耐性と公平性とを同時に有する分割アルゴリズムを提案した.さらに,選択順序問題 (picking sequence problem) と呼ばれる問題において,確率的に順序が決定されるケースを考察し,参加者が2人のケースで,相手の戦略を観測可能な場合に,自分の最適戦略の探索が多項式時間に収まることを示した.これらの研究成果は,国際会議 AAMAS-15, IJCAI-15, AAMAS-16 にそれぞれ採択された.
一方,社会的決定問題に関しては,直線上に2つの同質な施設を配置するモデルにおいて,ダミー入力への耐性を有するアルゴリズムの出力結果の特徴付けを行った.また,円周上への配置モデルについても考察を行い,ダミー入力への耐性を有するアルゴリズムの動作の特徴付けに成功した.本研究成果は国際会議 AAAI-16 に採択され,発表を行った.
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