研究課題/領域番号 |
26730009
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
吉田 悠一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 准教授 (50636967)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制約充足問題 / 近似困難性 / 性質検査 / 高階フーリエ解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、充足可能な制約充足問題の近似困難性を明らかにすることである。充足不可能な場合には半正定値計画法を使えば最良の近似度が得られることが分かっているが、充足可能な場合には代数的なアルゴリズムでより良い近似度が得られる場合がある。代表的な例としては、線形連立方程式をガウスの消去法で解く、というものが挙げられる。また近似困難性を示す為には、性質検査と呼ばれる枠組みを用いることになる。これは、与えられた関数がある性質を満たすか、その性質を満たすにはほど遠いかを、その関数に定数回クエリするだけで判定するという枠組みである。 そこで本年度は、代数的な性質の性質検査について研究を行うこととした。その結果、性質検査という分野における究極の問いである「アフィン変換に閉じた関数の性質が、定数クエリで検査可能である必要十分条件は何か」に答えることに成功した。必要十分条件をおおまかに述べると、その性質が定数個の多項式の関数として表現できることである。 この結果を得る為に、ブーリアン関数の高階フーリエ解析と呼ばれる数学的道具を利用した。ブーリアン関数のフーリエ解析とは、関数を線形関数の線形結合で表して解析することを指す。特に定数個の線形関数でよく近似できることが知られている。高階フーリエ解析では、関数を多項式に分解する。特に定数個の多項式を用いることで、フーリエ解析の時よりも強い意味で近似することが出来ることが知られており、この近似が性質検査の解析に特に有用であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、性質検査という分野における究極の問いである「アフィン変換に閉じた関数の性質が、定数クエリで検査可能である必要十分条件は何か」に答えることに成功した。これは性質検査という枠組みが提唱された20年前からの未解決問題であり、その意義は大きい。P・NP問題は「チューリングマシン上で効率的に(多項式時間で)解ける問題は何か」を明らかにするという問いであるが、本結果は別の計算モデルにおいて効率的に解ける問題は何かを明らかにしているとみなすこともできる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で研ぎ澄ました高階フーリエ解析を利用して、今後は充足可能な制約充足問題の近似困難性を明らかにする研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
英文校正の費用が見積もり額よりも減少した為、その差分が未使用額として残った。
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次年度使用額の使用計画 |
当初より英文校正に使用する予定の資金であるので、次年度も英文校正費用として割り当てる予定である。
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