本研究の目的は、充足可能な制約充足問題の近似困難性を明らかにすることである。充足不可能な場合には半正定値計画法を使えば最良の近似度が得られることが分かっているが、充足可能な場合には代数的なアルゴリズムでより良い近似度が得られる場合がある。代表的な例としては、線形連立方程式をガウスの消去法で解く、というものが挙げられる。また近似困難性を示す為には、性質検査と呼ばれる枠組みを用いることになる。これは、与えられた関数がある性質を満たすか、その性質を満たすにはほど遠いかを、その関数に定数回クエリするだけで判定するという枠組みである。 本年度は、充足可能な制約充足問題の構造を明らかにする為に、充足可能な制約充足問題の性質検査について研究を行うこととした。ここでは充足可能な制約充足問題が明示的に与えられ、それに対する変数割当がオラクルにより与えられる。つまり変数を指定すると、その値が返される。この問題の目的はその変数割当が充足解かそれにはほど遠いかを少ないクエリ数で検査することである。この問題に対して、定数クエリで検査可能な制約充足問題の必要十分条件を得ることに成功した。具体的には制約充足問題が算術的、すなわち合同関係のある種の一般化の時のみ定数クエリで検査可能であり、そうでなければ定数クエリでは検査不能であることを示した。この結果により既存の多くの結果が統合された。この結果はIEEE Foundations of Computer Science (FOCS)に採択された。
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