研究課題/領域番号 |
26730010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 知文 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50635860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 最適化理論 / スケジューリング / 配送計画問題 / 相互依存制約 / 動的計画法 / マルコフ決定過程 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、数理最適化の理論と応用の研究を通して培った知見を融合させ、災害発生時のライフライン復旧計画・復旧作業のための人員配置・作業割当に関する最適化手法を様々な角度から検討し、モデルの拡張性・スケジューリングの速さ・出力解の質の全てにおいて世界最高レベルの災害復旧スケジューリングソルバーを開発することである。平成26年度の主な成果は以下の2点である。 (A)ヒアリングによる柔軟な数理最適化モデルの構築:救急車の最適配置問題の研究で知られる稲川敬介氏(秋田県立大学)の協力を得て、移動時間行列などの災害復旧計画のインスタンスを地理空間データから柔軟に作成するノウハウを吸収した。これにより、スケジューリングの速さ・出力解の質を様々なデータで検証できるようになった。 (B)相互依存問題を克服する3つのアプローチ(間接探索法・ペナルティ関数法・大近傍探索法)による解法の構築:作業の先行順序制約や複数班の合流を考慮しなければならい災害復旧計画では、作業班は互いに独立ではなく、通常の局所探索法が使えない(相互依存問題)。研究代表者の従来の成果であるマトリクス・スケジューリング(間接探索法に分類される)をベースに、様々なパラメータで問題を解き、スケジューリング機能の強化をおこなった。また、相互依存環境下での多段階の意思決定問題を扱う「相互依存型決定過程」とその動的計画アプローチの提唱者である藤田敏治氏(九州工業大学)との共同研究により、不確実性を考慮した「相互依存型マルコフ決定過程」に対する動的計画法による再帰式と解法を導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階ではパフォーマンスの飛躍的な改善は達成できていないものの、災害復旧スケジューリングに求められる要素のヒアリングによる洗い出しと最適化モデルへの反映をおこない、災害復旧計画ソルバーの機能強化を着実におこなっている。また、地理空間情報から移動時間行列などの災害復旧計画のインスタンスを作成するなど、現実の問題に対してソルバーの性能を検証する環境を着実に整えつつある。さらに、相互依存環境下での不確実性を考慮した多段階の意思決定問題である「相互依存型マルコフ決定過程」を大規模な災害復旧計画に応用できれば、ブレークスルーが期待できる。以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は「モデルの拡張性・スケジューリングの速さ・出力解の質を向上させる」チューニングと「ロバストなスケジューリングの実現」に取り組む。 平成26年度に引き続き、3つの解法(間接探索法・ペナルティ関数法・大近傍探索法)の補完的なパフォーマンスにより、スケジューリングの速さ・出力解の質・モデルの拡張性を向上させる。平成26年度に構築した災害復旧計画ソルバーに対して、スケジューリングの速さ・出力解の質を見極めながら、並列計算および大きなインスタンスへの対処を含めて、解法のチューニングをおこなう。さらに、モデルの拡張性を強化する。 また、ライフラインの災害復旧特有の不確実なデータが全体のスケジュールの効率性に及ぼす影響を測定し、これをこれを軽減するロバストなスケジューリング手法を確立する。各復旧箇所の作業時間の見積もりに基づいて災害復旧ソルバーが出力する解と、真の実測値をインスタンスとしたときに災害復旧ソルバーが出力する解の差を不確実性の影響と定義する。この不確実性の影響がどのくらいでるかを測定する。さらに、自然な貪欲的対処方法の性能を評価する。作業班が復旧箇所に到着し作業を開始した後に、作業量の見積もりに誤りがあったと判明した場合、スケジュールのうち既に実行した部分を固定し、未完了の部分問題に対して更新されたデータを用いて最適化することを繰り返す方法である。また、マルコフ決定過程などの不確実性を考慮した確率最適化手法を部分的に導入し、性能を見極める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた地理情報システム「ArcGIS for Desktop」およびエクステンションのライセンス購入にあたって、所属機関からの研究費支援が得られたため、経費を削減できた。また、地理情報システムを動作させるデスクトップPCも5か月間借用することができため、PCの購入を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は米国ピッツバーグで開催される数理最適化(数理計画法)の国際会議 "the 22nd International Symposium on Mathematical Programming" (ISMP2015)に参加するため、翌年度分として請求した旅費のみでは若干不足する予定である。次年度使用額をPC購入および国際会議参加旅費に充当する。
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