平成28年度は複数クラスのある複数サーバ再試行型待ち行列モデルについて研究した.実際のコールセンター等のサービスシステムでは客の種類により,サービス要求が異なり,長いサービス時間を要求する客と短いサービス時間を要求する客が存在すると考えられる.この状況を踏まえ,GI/G/m/(m+G)再試行型待ち行列モデルを考えた.このモデルではクラス依存サービス時間のほか,再試行間隔もクラスに依存している.そのため,システムを記述する確率過程が多次元であり,解析が極めて難しい.28年度では共同研究者と一緒にこのモデルの安定条件を求めた.この結果はPerformance Evaluation誌に掲載された. また,コールセンターやデータセンターの効率化方法として,サーバが稼働していない場合に本来の仕事(一次)と別の仕事(二次)をすることがある.例えば,コールセンターでは顧客と対話していないときに顧客の情報をアップデートしたりすることがある.特にデータセンターの省エネの観点から,ジョブを処理していないときに,サーバをOFFにする(OFF時間の間に2次仕事をしているとみなす).しかし,二次の仕事から一次の仕事に戻るためには時間(Setup)がかかる.これらの応用を見据え,我々はSetup時間のある単一サーバ再試行型待ち行列を提案・解析した.また,システムの負荷に応じた処理能力変更可能な単一サーバモデルも提案・解析した.これらの結果はJournal of Industrial and Management Optimization誌で2編の論文として出版した.また,Setup時間を有する複数サーバ再試行型待ち行列モデルも共同研究者と一緒に検討して,安定条件および性能評価量を計算する効率的なアルゴリズムを求めた.この結果は現在学術論文誌に投稿中である.
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