1. 投稿中の64ビット最適均等分布擬似乱数発生法の論文について、肯定的なレフェリーレポートを受けて、改訂を行った。一方、32ビットMT19937の出力を連結して64ビット化した際に高次元均等分布性が低下する。そこで、格子構造を調べ、原因を解析した。また、MT19937の出力にラグを付けると、新たに幾つかの統計的検定で棄却されることを発見した。これらの結果を関連論文としてまとめた。 2. Sobol'列は金融工学の高次元数値積分に対して有効性を発揮する(準モンテカルロ法)。Sobol'列は一様性を決めるパラメータを有しており、その選択には自由度を持つ。Joe-Kuo(2008)は2次元プロジェクションの一様性の高いSobol'列を構成したが、実は、パラメータの探索回数は必ずしも多くない。そこで、2次元プロジェクションの更なる最適化を行い、より一様性の高いSobol’型点集合を作成した。特に、デジタルオプションなどの数値計算に有用と考えられる。プログラムを整理し、論文を準備している。 3. マルコフ連鎖準モンテカルロ法のためのCUD近似点集合の実装に関する研究を行った。先行研究として、Chenら(2012)は、短い周期のTausworthe擬似乱数発生法を準備し、一周期使い切った際に現れる格子構造を利用して、CUD近似点集合として使用する方法を提案した。彼らは、高次元均等分布性を一様性の指標として採用したが、2.の研究で用いたt-値で評価すると、収束精度が向上する可能性がある。Tausworthe法の2次元のt-値は連分数展開と関係がある。そこで、手塚-伏見(1993)の方法に帰着させ、連分数の観点から2次元のt-値の良い点集合を数学的に絞り、その中から3次元以上で良い点集合を探索する方策に気づいた。新しい実装方法の見通しが立ったので、早急に数値実験を行い、結果をまとめたい。
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