研究実績の概要 |
ヒトの認知行動・疾病と脳との関連についてはすでに多くの研究がなされている。特に、経時的に測定を行う実験において、一連の測定データを、時間を定義域にもつ関数として扱う関数データ解析のアプローチが利用されている。そのような脳データの解析で使用することを想定し、関数主成分分析(FPCA)法および関数多群正準相関分析(FMCCA)法を組み合わせることにより、分析者がより柔軟に特徴抽出を行うことが可能な方法をすでに提案している(Choi, Hwang, Yamamoto, et al., in press, Psychometrika)。この方法の核となるFMCCA法は、複数の関数データ間の関連度合いを最大に表現する部分空間を推定する方法である。しかし、確率的な取り扱いを行わない記述的モデルであり、さらに関数データ本来の無限次元性を仮定しない方法であった。そこで、データを無限次元空間に値を取る確率要素と捉えた一般化関数正準相関分析(GFCCA)法を開発した(山本・寺田, 2016, 第37回大規模データ科学に関する研究会)。無限次元性より、GFCCAモデルは無条件には成立しないことがわかっており、モデル成立のための十分条件を導出した。さらに、有限次元を仮定した場合はGFCCAモデルと等質性分析モデルは等価であるが、無限次元の場合は必ずしも成立しないことが判明した。 また、本研究ではこれまでに関数データのクラスタリング手法を開発してきたが、ヒトの認知行動や疾病と関連のあるクラスター構造を推定するための方法としては不十分であった。そこでまずは通常の有限次元データを対象として、認知行動や疾病などのアウトカムと関連のあるクラスター構造を推定するための方法を開発した(Yamamoto, et al., submitted).
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