昨年度は興味の確率変数列が多次元従属標本の下での制御変数推定量を構成した。この制御変数推定量は制御変数列の情報を用い興味の確率変数列の母数の推定量の精度を改善する推定量であるので、その推定の精度に関する性質が重要である。よって本年度は制御変数推定量の精度に関する漸近的性質(標本数を大きくしたときの性質)について主に研究を行い、その結果を導出した。具体的には、私の過去の研究において1次元であった興味の確率変数列の次元が多次元となり、制御変数推定量の漸近的性質の導出も複雑になったので、過去の研究の整理を行った。更に私が構成した多次元従属標本の下での制御変数推定量はその構成の中でスペクトル密度関数なる興味の確率変数列と制御変数列がもつ特性量の推定量を用いているので、多次元従属標本の下での制御変数推定量の漸近的性質の導出の中でこのスペクトル密度関数の収束等に関する性質が必要になる。しかし、このスペクトル密度関数も多次元であるので多次元のスペクトル密度関数推定量の収束等に関する漸近的性質が必要である。そのため、これに関する文献を調べ、整理を行うと共に、行列に関する文献等を調べ整理を行った。そして制御変数推定量の共分散行列(これが小さいほど精度の高い推定量)に標本数をかけた極限(標本数を大きくした時の)を導き出した。そしてこれが元の母数の推定量のものより小さい事を示した。これにより私が構成した多次元従属標本の下での制御変数推定量の方が元の推定量より精度の高い推定量であることが理論的に示された。
|