研究実績の概要 |
高次元医用データから有益な情報を効率的に抽出するための統計モデルの開発を目的とした当該研究の初年度である本年度の研究成果を以下にまとめる。
各被験者の観測に約100万個のボクセルが含まれるsMRIデータは医用画像データの中でも特に高次元であることで知られるが, このデータから認知症発症を予測するための統計モデルの開発に取り組んだ。研究の初年度であるため滑り出しをスムーズにする目的から, Advances in Data Analysis and Classification誌に掲載されたArakiet. al.(2013)のモデルに, スパース性を仮定した正則化多変量解析法と基底展開法を組み合わせることで情報量の損失をおさえた次元縮小が可能になるというアイデアを加えて, モデルを拡張した. 特に, 認知症発症を早期発見するためのスパースな制約を課した非線形ロジスティック判別モデルにこの次元縮小法を取り込み, 数値実験により他の方法と比較検討することでモデルの有用性を検証した. また, オープンデータに適用し, 認知症発症を予測するのに有用であることが示唆された. この研究成果は現在は論文としてまとめ, 投稿準備中である. さらに, 提案した次元縮小法を比例ハザードモデルの枠組みで捉えることでアルツハイマー発症の予後予測のためのモデリングへ拡張し,研究成果を国際会議で発表した(27th International Biometric Conference).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Advances in Data Analysis and Classification誌に掲載されたArakiet. al.(2013)のモデルに, スパース性を仮定した正則化多変量解析法と基底展開法を組み合わせることで情報量の損失をおさえた次元縮小が可能になるというアイデアを加えてモデルを拡張し, さらに予後予測の枠組みに発展させた. 国際会議での発表を行うと同時に国外の研究者との意見交換ができ, さらに論文投稿の準備段階までが終了した.
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今後の研究の推進方策 |
現在, 次元縮小のための正則化多変量解析法と基底展開法の組み合わせによる方法を柔軟な正則化法とするべく, いくつかの提案を理論的な検討とともに数値実験で検証している. また, 経時的に測定された高次元データを教師なし学習により分類した上で説明変数とした疾病発生の予後予測のためのモデリングを検討する. これには, どのような分類を行うかが重要となる. さらに, 当初の研究計画通り, 説明変数間の構造分析の検討をし, 具体的には高次元医用画像と心理的スコア, そしてそのほかの共変量との関係性を捉えるためのモデリングを検討する.
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