研究実績の概要 |
平成29年度は前年度に引き続き,近年の急速な測定技術の発展に伴い複雑多様化した膨大な量の各個体の観測点が多く個体差のある高次元医学データから新たな知見を有効に抽出するための統計学的手法の開発に取り組んだ. まず, アルツハイマー病診断のため撮影される脳磁気共鳴(MRI)データは複雑な構造を持つ高次元データで, 各個体が約100万個のボクセルと呼ばれる立方体の集まりから脳構造を捉える. このような高次元医用データは標本数が次元に比べて圧倒的に少なく通常の統計モデルではモデルのパラメータ推定において安定した汎用性の高い推定値を得ることが困難であった.本研究では、高次元データの情報量を落とさずに次元縮小しつつ,ロジスティック回帰モデル,グラフィカルモデルといった統計モデルの適用での情報抽出のためのモデル開発を行った. 高次元データの次元縮小において近年主流となっているのはスパース推定(Tibshirani 1996,Zou 2006)であるが, この方法が有効に機能する次元は数百程度であり本研究で想定する医用データは遥かに高次元であるため直接適用できない. そこで本研究では正則化多変量解析法と基底関数展開の組み合わせで情報量の損失を抑えた次元縮小を可能にする事に取り組み,判別モデルの予測性能を感度特異度の観点から数値実験でその精度を検証した. さらに,超高次元共変量を含む媒介分析を,上記の次元縮小の工夫を行い関数化した関数データをモデルに含めた関数データ構造方程式モデルの開発に取り組んだ. このモデルにより, 地点や時点の変化に伴い変動する変数の目的変数への直接効果,間接効果を捉える事ができた. 本研究成果は論文投稿準備中であるとともに, 国際会議で発表した.
|