研究実績の概要 |
Murakami, H. (2014). Math. Sci.: 検定統計量がある特定の分布に対して局所最強力検定となることを示すことは, 検定問題において重要な意味を持つため多くの議論がなされている. 本論文では, 対数ロジスティック分布に対してウィルコクソン検定が局所最強力検定となることを示した. また, 対数ロジスティック分布を一般化し, 一般化対数ロジスティック分布に対して局所最強力検定となる検定統計量を導出した. 一般化対数ロジスティック分布を仮定し, 検定統計量の漸近効率を求めることにより統計量の有用性を示した. 漸近効率は極限の下での議論であるが, 実際のデータ解析は有限標本である. そこで, 標本サイズが小さい場合において既存の統計量と検出力の比較を行い, その妥当性を示した. Ogura, T. and Murakami, H. (2014). Comput. Statist.: 本論文では, 修正型Makeham分布からの順序統計量の積率を導出し, 順序統計量の期待値および分散を求めた. また, 修正型Makeham分布からの順序統計量を用いた新たな検定統計量を提案した. 標本サイズが小さい場合には精確な棄却点を導出し, 標本サイズが大きい場合にはエッジワース展開により棄却点の導出を行った. 既存の検定統計量と検出力の比較を行い, 提案統計量の妥当性をシミュレーション実験により示している. Murakami, H. (2014). Statistica Neerlandica: 有限標本の下で, ある点における確率の導出は統計学において重要な役割を果たしている. しかし, 標本サイズが大きくなると確率計算は困難となる. 本論文では, 独立非同一な一様分布に従う確率変数の和の近似分布の導出を行った. 近似法として鞍点近似を用いて, 正規近似と近似精度の比較を行い, その妥当性を示した. また, 鞍点近似の近似誤差を導出することで, 近似の信頼性を示している.
不偏性に関する論文や多変量検定統計量, 近似分布に関する論文4編を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的のひとつに, 環境データを解析する際に多用されているノンパラメトリック法の理論の構築がある. 特に検定統計量の考案, 不偏性の検証などを計画していたが, 検定統計量の考案, 極限分布および近似分布の導出, 不偏性の検証を中心に研究を進めることが目標だったが, それぞれにおいて論文が採択されたので, 研究目的はおおむね順調に達成されたと考えられる. さらに提案統計量の良さを理論的に証明したため, 論文については当初の計画より進展していると考えられる. しかしながら, 研究促進のために海外の研究者との情報交換をするという点においては, メールでの議論が中心となってしまったため, 情報収集という点を加味すると, 総合的におおむね順調に進展しているとなる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては, 新しい多変量ノンパラメトリック検定統計量の考案に向けて研究を行う. 特に, 多次元多標本データにおける順位の決定法について考える. 考案した順位決定法の妥当性を様々なノンパラメトリック統計量に適用することで検証する. また, データの次元間の相関が強い場合や弱い場合においても検証することで, 頑健性について評価する. 理論的研究が進まない場合は, 数値検証に重点を置きながら, 問題解決の糸口を探る. また, 海外の研究者と口頭で議論を行うため, 国際学会への参加や研究者のところへの訪問することで研究の推進を図る.
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