研究実績の概要 |
Murakami (in paress). 本論文では, 生物学で多用されている多重比較における新しい検定統計量を提案し, 標本サイズが小さい場合の棄却点を導出した. また, 検定統計量の棄却点に対する確率限界値を導出することで, 標本サイズが大きい場合への適用も可能となった. Murakami (2015). Math. Sci.:確率変数の和の分布の導出は統計学において重要な役割を果たしているが, 標本サイズが大きくなると確率計算は困難となる. 本論文では, 独立非同一なガンマ分布に従う確率変数の和の近似分布の導出および近似誤差を求めた. 鞍点近似を用いて, 正規近似との近似精度の比較を行ない, その妥当性を示した. Murakami and Ha (2015). 本論文では, 修正型Mood検定の漸近効率を求めることにより統計量の有用性を示した. 漸近効率は極限での下での議論であるが, 実際のデータは有限標本である. そこで修正型Mood検定の近似分布の導出することで棄却点の導出を行ない, シミュレーション実験によりその妥当性を示した. Murakami and Lee (2015). 仮説検定を行う際, 検定統計量が不偏になるということは重要な意味を持つが, その証明は難しい研究課題である. 本論文では, 順序対立仮説に多用されるノンパラメトリック統計量が任意の分布において不偏になることを示した論文である. Murakami (2015). Statistics:本論文では, 修正型Wilcoxon検定が片側対立仮説の下で不偏, 両側対立仮説の下で非不偏になること, 平均に対して対称にならないことを示した. また, 検定統計量の良さを示す漸近効率を導出した. 近似分布および近似誤差を導出することで有用性を示し, 検出力の比較により統計量の妥当性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的として, 環境データを解析する際に多用されているノンパラメトリック法の理論の構築がある. 当該年度は「多変量統計量への拡張」および「検定統計量の極限分布および近似分布の導出」を中心にして研究を進めることを研究計画としていた. 上記の研究成果にも記述した通り,「検定統計量の極限分布および近似分布の導出」について5編の論文が採択され, さらに新しい検定統計量を提案できたので, ふたつ目の目標に対しては順調に成果が上げれていると考える. しかしながら, ひとつ目の目標「多変量統計量への拡張」に対しては国際会議での発表をし, 論文の投稿までは至ったが採択はされていない状況である. ふたつ目の研究に重点を置いたという点を加味すると, 総合的に概ね順調に研究は進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては, 更なる多変量検定統計量の提案および変化点の推定問題に向けて研究を行う. また, 様々な環境データに対して提案した手法で分析を行い, 既存の分析結果との比較を行う. 理論的研究が進まない場合は, 数値実験に重点を置きながら, 問題解決の糸口を探る. また, 国内・海外の研究者と口頭で議論を行うため, 国内学会や国際学会への参加, 同じ研究内容に興味を持っている研究者を訪問することで研究の推進を図る.
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