研究課題/領域番号 |
26730027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣本 正之 京都大学, 情報学研究科, 助教 (60718039)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 画像認識 / ニューラルネットワーク / ディープラーニング / 低消費電力技術 |
研究実績の概要 |
本年度は,画像認識向けのニューラルネットワークについて,主に文字認識を対象としてアルゴリズムの評価およびハードウェアアーキテクチャの検討を行った.アルゴリズム評価においては,一般に広く取り組まれている手書き文字認識に加え,毛筆で書かれた文字の書体分類にも適用可能であることを示し,ニューラルネットワークの応用範囲の広さを確認した.ハードウェアアーキテクチャについては,畳み込み演算回路を多数並べるメニーコア方式を採用することとした.ニューラルネットワーク向けのハードウェアは本年度中にも他の複数の研究事例が提案されるなど現在盛んに研究が行われている状況であるが,いずれも上記の方式を採用しており,既存プロセッサに比べ数十倍の性能向上を達成している.これらの事例調査を通じ,本研究で採用するアーキテクチャの妥当性を確認した. また,当初計画においては,上述のニュラルネットワーク向けハードウェアに対してアルゴリズムを効率良くマッピングする方式を検討する予定であったが,関連研究の調査を通じ,より性能向上効果の見込めるあいまい(概算的)コンピューティングについて前倒しで検討を行った.一般に回路の動作電圧を下げると電力効率は向上するが,回路遅延の増大による演算誤りが発生する可能性がある.本研究では,ニューラルネットワークにおける畳み込み演算を行う回路を低電圧動作させた際の,画像認識精度と電力性能比の関係を明らかにした.その結果,提案手法により認識精度を損うことなくニューラルネットワークプロセッサの電力効率を向上させることが可能であることを示した.これは,誤りを許容する概算的コンピューティングを行うことで,半導体の性能を最大限まで引き出すことができる可能性を示している.今後,ばらつきを考慮し同様の検討を行うことにより,さらなる性能向上が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェアアーキテクチャの検討については,関連研究の調査から開始し,基本方式の決定まで行うことができたため,おおむね計画通りに進めることができた.マッピング手法の検討については,今年度は検討を見送ることにしたため進展はなかったが,先に検討を行うことにした概算的コンピューティングについては,前倒しで研究成果が得られた.このため,3年目に行う予定であった,半導体ばらつきを考慮した検討に2年目で着手することができるようになり,より幅広い検討を行うことができると期待される.よって,研究順序の変更はあったものの,全般としては順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画の通り,演算器の簡略化等による概算的コンピューティングの効果について検討を行う.また,半導体のばらつきを考慮した概算的コンピューティングについても年度を前倒しして検討を進める.20nm前後の先端プロセスを対象とし,特にばらつきが大きくなると言われているニアスレッショルド動作も視野に入れ,低電圧動作時における画像認識精度への影響を調査する.また,本年度に検討を見送ったマッピング手法についても検討を行う.ここでは,上記のばらつきを考慮し,演算器毎の性能ばらつきまでを考慮したマッピングおよび学習・識別アルゴリズムの検討を行う.2年目はシミュレーションを基本とし上記の検討を進め,3年目のチップ試作による実測評価に向けアルゴリズムおよびアーキテクチャを決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品(計算機)購入時に構成を見直すことより予定より低価格で購入することができたため,助成金残額が発生した.金額が少額であるため,該当金額を年度内に使用せずに次年度助成金と合算して用いる方がより効果的に利用できると考えたため,次年度使用額とした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はシミュレーションデータ保存用の計算機を購入予定である.上記の次年度使用額は本計算機の保存領域の拡張に充てる.単一の計算機に保存領域を集中させることができるため研究効率の向上が見込まれる.
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