本研究では、太陽光パネルと蓄電池を持つ需要家が相互に接続された分散型電力ネットワークを効率的に設計するアーキテクチャ設計技術を確立する。分散型電力ネットワークを構成する蓄電池や電力変換器などの物理特性は複雑で、電力システムを回路レベルでモデル化することでそのシミュレーションや最適化を行ってきた。しかし、回路レベルのシミュレーションは非常に時間がかかる。そこで本研究では、対象システムを回路レベルより高位の抽象度で記述し、シミュレーションの高速化と物理特性の考慮という相反する目的を両立させる。 今年度は最終年度であり、これまでの成果を有機的に結合させることに重点を置いた。特に、電力変換器の物理特性の高位抽象モデルに関しての検討を行った。この成果を活用することにより、物理特性を考慮した高速・高精度なシミュレーションが可能となる。 また、分散型電力ネットワークの大規模シミュレーションに向けて、電気自動車 (EV) との連携についても検討を行った。近年、太陽光パネルや蓄電池に加え、EVも電力ネットワークの有力な構成要素となっている。EVは走行距離の長距離化のため搭載されている蓄電池が家庭用よりも大型である。そのため、EVの蓄電池を活用することで分散型電力ネットワークの電力融通を効果的に実現できる可能性がある。これまでの成果を発展させ、分散型電力ネットワークとEVとの連携についても基礎検討を行い、その有効性を確認した。これらの成果は国内外で発表した。
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