研究課題/領域番号 |
26730035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
置田 真生 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (50563988)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自動並列化 / 生体シミュレーション / クラウドサービス |
研究実績の概要 |
研究の全体構想は、生体機能の本質的理解を支援するため、多様な生体機能を統合した大規模生体モデルの高速なシミュレーションを生体機能研究者に提供することである。この構想のもと、これまでに汎用生体シミュレータ Flint を開発し、生体機能モデル記述言語 PHML で記述した生体モデルから並列実行可能なシミュレーション・プログラムを自動的に生成する手法を確立している。さらに Flint を広く利用するための手段として、ブラウザから実行できるクラウドシミュレーションサービス Flint K3 を提供している。 本研究では、既存の生体シミュレータ Flint および Flint K3 に対して次の2つの拡張を行う。 (1)単一シミュレーションのスケーラビリティ向上(対象:Flint) (2)クラウド環境における複数シミュレーションのスループット向上(対象:Flint K3) 平成27年度は、まず(1)に関して、生体機能分野の研究者の協力を得て超大規模な生体モデルを作成し、そのシミュレーションを現実的な時間内に実行できる方法を確立した。このモデルは生物的には視覚野を構成する脳神経細胞ネットワークを模したもので、数学的には2,800万個以上の連立方程式からなる。並列実行を用いずにこのモデルをシミュレーションした場合には 170 時間以上を要する。本研究で確立した自動並列化機能によって処理の 98.7% を並列化でき、シミュレーション時間を6.2時間(40並列の場合)に削減できた。次に(2)に関しては、(1)の成果を Flint K3 に組み込んだ新システムの構築に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に見直した研究計画では、(1)Flint K3のクラウド環境移行(2)シミュレーションの改良を Flint K3 に反映し、一般公開(3)複数シミュレーションを同時実行する場合の効率的な資源割り当ての自動化(4)実利用データに基づくシステム改善の4段階の方針を立てた。 平成27年度内に(2)まで完了する予定であったが、現在の進捗は(2)の途中段階である。具体的には、改良の反映を完了しベータ版として限定ユーザに公開できている。遅れの原因は、単一シミュレーションのスループット向上に関して新たな発見があり、そちらを優先したためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、研究計画のうち``複数シミュレーションを同時実行する場合の効率的な資源割り当て’’に重点して取り組む予定である。 この目的を次の2つの課題に分け、段階的に取り組む。まず、個々のシミュレーションに関して最も資源効率のよい並列数を自動的に決定する手法を確立する。具体的な手法として、シミュレーション対象の生体モデルの特徴量を抽出し、過去の実行情報から深層学習などの機械学習を用いることを想定している。 次に、同時実行している他のシミュレーションを考慮した並列数の決定手法を開発する。具体的には、各シミュレーションが最適な並列数を選択した場合の余剰資源に注目し、費用対効果の高い余剰資源の割り振りを予測することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
大容量メモリ・マルチコア計算機の購入を予定していたが、次世代CPU(Intel Broadwell-EP Xeon)の発表を受け、その発売を待って購入することを計画したため。
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次年度使用額の使用計画 |
Intel Broadwell-EP プラットフォームのマルチコア計算機、とくにDDR4メモリを搭載しメモリ転送が高速なモデルの購入を検討している。 この理由は、これまでの実験からメモリ転送速度がシミュレーションを律速することが分かっており、高速メモリ環境における大規模シミュレーションの予備実験と性能評価を行うためである。
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