研究課題/領域番号 |
26730042
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大森 隆行 立命館大学, 情報理工学部, 任期制講師 (90532903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソフトウェア工学 / ソフトウェア開発支援 / ソフトウェア開発環境 / ソフトウェア進化 / プログラム理解 |
研究実績の概要 |
過去に行われたソフトウェア変更を理解せずに新たな変更を行うことは、ソフトウェアの品質低下を招く原因となる。これを防止するため、開発者が統合開発環境(IDE)上で行ったソースコード編集操作の履歴を利用した開発支援手法について研究を行った。 平成28年度は、交付申請書の内容に基づき、プログラム理解支援のための操作履歴の要約手法を模索する過程で、開発者がソースコード中に記述する自然言語のコメントを活用することを考えた。特に、多くの既存手法が前提としている改版履歴には含まれない情報として、開発途中で削除されたコメントに着目した。実際の開発において記録された操作履歴に含まれる削除コメントを分析することで、1.コメントの削除操作から開発者の意図を推測できる事例があること、2.削除されたコメントを手がかりに、特定の機能に関するコード断片を検索可能であること、3.多くのコード要約は開発履歴の要約としても使えること、4.コメントのみが削除され、その説明対象であるソースコードが残ったままになる事例が存在すること、5.上記4の状況において、コメントを復元することで説明対象のソースコードの理解を促進できる事例があること等を確認した。これらの成果について、国内会議、国際会議、国内論文誌に投稿した。 また、昨年度から行ってきた操作履歴再生器OperationReplayerの編集操作の理解に対する有効性についての検証をさらに進めて、論文投稿を行った。さらに、操作履歴の記録および応用手法に関するサーベイ論文の英訳を完成させ、Webページ上に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度計画の項目(タスク推測、抽象情報を扱う操作履歴再生器、操作履歴再生器の評価)、平成27年度計画の項目(操作履歴のグラフ表現への変換および評価)については、昨年度より完成度を高めることができた。具体的には、目的の操作をより素早く発見するための操作履歴再生器の機能拡張、リファクタリング操作理解に関する再生器利用の有用性の評価を進めた。また、操作履歴のグラフ表現は、これまでに実現したものに基づき、軽量化のための改善について現在検討中である。 平成28年度計画の操作履歴の要約ツールの実現および評価についても、おおむね順調に進展している。研究実績の概要において述べた削除されたコメントに基づく要約は、削除されたコメントが存在し、その説明の妥当性が維持されている場合に利用状況が限定されてしまうものの、試験的な実装において、その有用性を確認している。上記より、本課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書に記述した通り、プログラム変更(編集操作)の履歴要約手法に削除コメントを使用するという拡張を行い、補助事業の目的をより精緻な達成を目指すこととした。平成29年度は、ソースコードおよび開発履歴の要約手法およびこれまでに提案してきた手法の改善・拡張を進め、開発支援ツールの実装および評価実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法の工夫によって、評価に被験者が不要となったため、直接経費を予定より節約できた。
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次年度使用額の使用計画 |
ソフトウェア理解を支援するプログラム変更要約の生成に、当初の予定に加えて、過去のソースコードに含まれるコメント情報を利用するという手法の拡張を行っている。さらに、これまでに提案した操作履歴再生器等の改善を進めている。これらの成果について発表を行う予定である。
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