研究課題/領域番号 |
26730044
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
大原 衛 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部情報技術グループ, 主任研究員 (80463008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GPGPU / 離散イベントシミュレーション / 並列シミュレーション / TimeWarp法 |
研究実績の概要 |
本課題では,GPGPU(General-Purpose computing on GPUs) 等を用いた並列計算機において,離散イベントシミュレーション(DES)を実行する手法について研究と開発を行う.近年,GPGPU を用いた連続系シミュレーション(CSS)の高速化は広く取り組まれているが,GPGPU を用いてDES の並列化を試みた事例は報告が非常に少ない.DES の応用は待ち行列やネットワーク,論理回路シミュレーションなど,非常に幅広く,これらの分野でも並列化による性能の向上が強く求められている.本課題では,楽観的手法によるGPGPU上のDES の実行速度向上と,故障や通信遅延に耐性を持つGPU 間分散アルゴリズムの開発に取り組む. 並列DES(Parallel DES: PDES)のためのアルゴリズムは,大きく保守的アルゴリズムと楽観的アルゴリズムに分類される.GPGPUにおいて保守的アルゴリズムを用いた研究は数例の報告がある.一方,楽観的アルゴリズムをGPGPUに適用した例は報告が見当たらない.楽観的アルゴリズムのGPGPUへの適用可能性の検討は,本研究の大きなテーマである.
本年度は,単一のGPUを用いたPDESの実行法について検討した.このためのベンチマークとなる簡易的なシミュレータの実装を行った.まず,GPGPUを用いた際の性能向上の指標とするため,GPGPUを用いない通常の計算機で逐次的に実行を行うプログラムを作成し,次いで同環境で保守的なPDESアルゴリズム,楽観的なPDESアルゴリズムを用いるものをそれぞれ実装した.それぞれの代表的な並列アルゴリズムとして,NULLメッセージ法,TimeWarp法を用いた.また,GPGPUを用いて両アルゴリズムの実装を行った. さらに,成果を複数のGPGU環境で利用できるようにするためのライブラリを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最新のGPGPU計算機を導入し,簡単な性能計測を行った.その結果,従来申請者が利用していた計算機と性能の傾向に差異が見られた.具体的には,イベントの種類によって場合分けをする処理による性能低下が,計画時の予想よりも小さくなっていた.このため,他の処理の性能への寄与が相対的に大きくなり,GPGPUを用いて並列シミュレーションの性能向上を図るには,追加的な工夫が必要と分かった.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,GPGPUを用いた簡易的なシミュレータを作成しているが,どのような処理が性能に影響を与えているか,最新のGPGPU計算機でプロファイリングを行う.それに基づいて,性能向上のための手法を検討する. また,複数のGPUを用いた計算での耐障害技術について研究する.このためにソフトウェア若化法の採用を検討しており,そのアイディアを6月に国際会議 The 9th International Conference on Mathematical Methods in Reliability(MMR 2015)で発表予定である.この場で得られる知見を基に,研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
見積り競争による物品の購入を行った結果,計画よりも安価に購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
大学または企業の提供する計算機資源の利用による実験を計画している.これは,使用時間またはデータ量に対して課金されるサービスである.このための使用料(費目:その他)として充て,実験時間をより長く確保できるようにする.
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