Internet of Thingsの分野では,末端のデバイスとも IPパケットのやり取りを想定するが,実際のビル設備ネットワークでは,IPは未だ限定的にしか使われていない.これは,IPと相性と良い通信メディアである Ethernet が,多量に散在する設備機器を接続するのに不向きであること,ビルと相性の良い RS485 通信メディアの上にIPを実装した例がほとんどないこと,また,RS485 のような低速メディアによって発生するトラフィック問題があること,などが考えられた.本研究では,まず,IP層をRS485メディア上に実装し,その実現性・有効性についての評価を行った.その結果,RS485ネットワークの末端ノードにIPインタフェース機能を持たせ,パケット交換できることは実証できた.多少の帯域の効果的利用アルゴリズムを適用可能であり,通信を行っているノードに優先的に帯域を割り当てることもできた.これらの手法により,IP over RS485技術で,センサ情報の収集に関するアプリケーションは,実現可能であることが分かった.一方で,外部から制御信号を送り込む場合には,末端ノードは,セキュリティポリシーの関係で,外部から開始される通信は遮断されるため,WebSocket技術を用いて,TCPセッションを張りっぱなしにする必要がある.帯域が限られているため,優先的なメッセージ配送を行う必要があり,本研究の中で,その技術開発も行った.次に,RS485自体の高速性には限界が見えてきたため,DSL技術の適用を考えた.具体的には,RS485のツイストペア線に,HD-PLC技術を適用する実験を行った.その結果,200mのケーブル上で,50Mbps程度のスループットを達成できた.HD-PLCは,市場価格でRS485よりもはるかに高価であるが,技術的には十分な通信速度を出せることを実証できた.
|