研究課題/領域番号 |
26730048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小南 大智 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (00709678)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己組織型制御 / 管理型自己組織化制御 / センサーネットワーク / ロバスト制御 |
研究実績の概要 |
今年度の目標として掲げた、ネットワークダイナミクスが線形であるシステムに対するモデル予測制御に基づいた機構の導入を実現し、ネットワークシステムの動作が収束するまでの時間を大幅に短縮できることを明らかにした。
ネットワークダイナミクスが線形であるシステムとして、申請者が以前取り組んだ、ポテンシャルに基づく自己組織型経路制御による情報収集センサーネットワークシステムを対象とした。ポテンシャルに基づく自己組織型経路制御では、ネットワーク内の各ノードがポテンシャルと呼ばれるスカラー値を保持しており、データ中継の際に次ホップのノードの選択を、次ホップノードとのポテンシャル差を用いて判断する。このような経路制御では、ネットワークダイナミクス、すなわち個々のノードのポテンシャルの計算が線形の形式で与えられるため、各ノードから発生するデータフローのレート、トポロジーの完全な情報が与えられた際に、全てのノードのポテンシャルについて、収束値を求めることが可能である。
データフローレートおよびトポロジー情報を一ヶ所に収集して、各ノードのポテンシャルの収束値を計算し、各ノードに計算結果を設定することも可能であるが、自己組織型の制御手法の利点である時々刻々と変化する外部環境に対する適応性が失われる。本研究では、一部のノードに対してポテンシャルのコントロールを行うことで、個々のノードの自己組織的な動作を失うことなく、すなわち、自己組織型制御の利点を失うことなく、全ノードがこの収束値に到達するまでの時間を短縮可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載の通り、今年度の課題として掲げた目標を達成できたことから、達成度について順調に進展していると判断した。
現在までの研究成果については、査読付き学術論文誌1本への投稿、および、1件の査読付き国際学会での発表、4件の国内学会での発表を行なった。この際に、多くの研究者との議論を行なうことで、今後の検討点を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の目標としていた、コントロールに伴う情報収集の時空間的なオーバーヘッドについては、既に解決の目処が立っている。コントロール入力を与えるノード(管理ノード)はネットワークのダイナミクスを元に、一部のノードへ入力すべき制御入力値を決定する。この際に収集する情報は、トポロジーの変化および各ノードのデータフロー生成レートである。トポロジーの完全な情報を所有していれば、データフロー生成レートを全てのノードから取得せずとも、一部のノードから取得した上でダイナミクスを推定することで、収集する情報量を削減できる。また、モデル低次元化技術を用いることで、この推定に要する計算量を削減することが可能である。これらを制御分野の専門家の助力のもと進行中である。
一方で、上述のトポロジー情報の収集はネットワーク全体に対して行う必要がある。これまでは単一の管理ノードが制御入力を決定していたが、管理ノードの役割を分散化することで、スケーラビリティを向上するとともに、個々の管理ノードが集める情報量の一層の削減を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請額からの減額と、国際会議参加費用が申請時想定額より高額であったことから、当初購入を予定していたサーバーではなく、構成を見直したものを購入した。結果、合計支出額が交付額を下回った。申請時に研究遂行のために必要としていた物品の購入は適切に行なえているため、結果的に次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり助力を受けている制御分野の専門家の所属が変わったため、その打ち合わせに要する旅費の補填に利用する。
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