平成27年度では,音声通話 (VoIP) やビデオ会議といった通信のリアルタイム性を要求するアプリケーションを対象とした省電力パケット転送方式を提案および評価した.提案方式は,リアルタイムアプリケーションの通信品質を維持しながら省電力なパケット通信を実現するために,アプリケーション毎に設定される許容可能な遅延ジッタのもとで,無線端末と無線アクセスポイント間のパケットを間欠的にパケット転送することによってスリープ可能なアイドル時間を増やす.これにより,提案方式は,メディアアクセス制御レベルの省電力方式と組み合わせることによって省電力なパケット通信を実現する.さらに,提案方式では,複数のパケットを単一のパケットに集約することや直近のフロー特性の変化を利用したパケット転送間隔の制御によって,パケット転送時のオーバヘッドを削減し,効率的な省電力を可能とする.
異なる品質を要求するアプリケーションのフローが混在する状況を想定した計算機シミュレーションによって提案手法を評価した.その結果,提案方式は,新たなアプリケーションが開始あるいは停止したなどによるフロー数の変化やトラヒック量の変化がある環境においても,アプリケーションに要求された遅延ジッタを満たしながら省電力を実現できることを示した.特に,小さいパケットが生成されるようなアプリケーションに対しては,提案方式による省電力効果が高いことがわかった.以上の研究成果は,国内研究会において発表した.
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