研究期間全体を通して、無線チャネルが変動しかつユニキャスト通信とマルチキャスト通信が混在する無線LAN環境、さらにユニキャストについてはUDPとTCPのフローが混在する環境にも注目し、通信帯域、遅延等の通信性能と省電力性能を高い次元で両立させる無線LAN基盤技術について研究した。 具体的には、まずチャネル状態が良く高伝送レートが利用可能なユニキャスト受信端末局やマルチキャスト受信グループ宛てのパケットを優先送信し、チャネル状態が一時的に悪い受信端末局/グループ宛てのパケットは状態改善後にそれまでの送信見送り分の補償を含めて送信するチャネル状態変動適応型送信スケジューリング法を確立した。 また、各端末局がチャネル状態改善までの期間や他局の通信による送信待機期間に適切にスリープすることで、消費電力量を抑制する省電力化法を確立した。 平成28年度以降は想定環境を複数無線LANが混在している環境に拡張し、近接無線LAN同士が連携しながら相互干渉を抑制することで、高効率かつ省電力な通信を可能にする伝送制御法を確立した。 最終年度の平成29年度においては、ユニキャスト/マルチキャスト両種別のフローを共に受信する端末局に注目した両種別パケットの連携伝送法や制御フレームの縮退法、省電力化については複数無線LAN間の相互干渉に適応したスリープ制御法等、各要素技術を洗練化した。 ユニキャスト/マルチキャスト通信の混在環境や各受信端末局/グループのチャネル状態が変動する環境を解析し、様々なパケット通信状況やチャネル状態に応じて適切な受信端末局/グループへのパケット送信や適切な端末局におけるスリープ制御を行うことで、通信性能と省電力性能を高い次元で両立させたことが本研究最大の意義である。本成果は、さらなる普及が予想されるスマートフォン等のモバイル端末の快適な利用等につながる技術として重要であると考えられる。
|