本研究は,大規模災害時に大量に発生する被災者の安否情報やライフライン等の災害時情報を対象とし,被災者や情報を必要とする利用者個々の情報を状況に応じて保護しつつ,利用者の要求に応じて災害時情報を動的に提供する,災害情報共有手法を確立することであった.具体的には,利用者個々の情報の開示は最低限に抑制しつつ,利用者の要求に基づいて動的かつ安定的に災害時情報を提供するシステム,すなわち安心でロバストな災害情報共有システムの実現を目指して研究を行った. 平成26年度は,利用者個々の情報について考慮しつつ災害時情報共有を行う個人情報アウェアかつ災害時情報アウェアな災害時情報交渉モデルの構成を行った.利用者が要求する災害時情報の量と質を充足しつつ,利用者の個人情報保護も考慮して災害時情報提供を行うための指針について検討を行った. 平成27年度は,個人情報アウェアかつ災害時情報アウェアな災害時情報交渉モデルに基づき,プライバシ指向かつクライシス指向のエージェントフレームワークを実現するため,災害時情報交渉モデルにおける個人情報開示程度決定手法について検討を行った. 平成28年度は,前年度までに検討したプライバシ指向かつクライシス指向の災害時情報共有システムにおいて,利用者に積極的な情報提供を促しつつ適切な情報共有を実現するため,自動交渉エージェントによる交渉によって情報の価値を決定し,情報提供者に効用を配分するエージェントフレームワークの実現手法の検討を行った.具体的には,情報の価値決定機構と情報提供者の貢献度を考慮した効用配分のための貢献度決定機構の検討を行った.また,安否情報確認システムのプロトタイプを用いたシミュレーション実験を行った.
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