研究課題/領域番号 |
26730056
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
董 冕雄 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20728274)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ユーザ参加型センシング / アルゴリズム / インセンティブモデル |
研究実績の概要 |
近年スマートフォンの普及により、ユーザ参加型センシング(Paticipatory Sensing、以下PS)というスマートフォンを利用して低コストかつ広範囲に渡るセンサーデータを収集する技術が注目を集めている。本研究はPSの以下3つの根幹技術の研究を目標に掲げる:①モバイル・スマートフォンネットワークにおける様々なアルゴリズムの設計、②PSにおけるユーザ激励型のインセンティブモデルの構築、③PSのスケーラビリティに関する研究 26年度は、スマートフォンを主とするモバイルセンサーネットワークにおける様々なアルゴリズムの研究開発を行った。具体的には、セルラーネットワークをアシストするモバイルセンサーネットワークの自立的なデータフォワーディングアルゴリズムの研究に取り組んだ。PSにおいてリアルタイム性が求められる場合が多く、セルラーネットワークを使えばある程度リアルタイム性は保てるが、近年のセルラーネットワークは飽和状態であり無制限にデータを送受信するのは現実的ではない。スマートフォン端末間通信を利用することで前述の問題を解決することが可能であるが、端末の可動性から端末間のリンクは非常に不安定であり、安定したデータ転送を実現するためのフォワーディングアルゴリズムは重要な要素技術である。また、PSにおけるスマートフォンネットワークのスケジューリングアルゴリズムについて研究を行った。スマートフォンにとってバッテリーの延命は重要であり、消費電力をいかに抑えるかといったスリープスケジューリングを設計する必要がある。今年度得られた研究成果の一部は、国際会議での最優秀論文賞の受賞や、世界的に影響力があるIEEE Transactionsなどの学術論文誌に論文を掲載(確定)などで評価されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は主に、関連研究の幅広い調査、研究実績の概要で述べたPSにおける様々なアルゴリズムの構築、数式によるモデル化や数値解析による提案手法の検証、およびシミュレーションによる性能評価を行うこととなっていたが、当初の予定通りこれらの計画を順調に実行できた。研究成果の一部は、IEEE Global Communications Conference(Globecom)やIEEE International Conference on Communications(ICC)といったIEEE Communication Society最大規模の国際会議を含む会議で論文が発表(確定)された。また、無線通信分野においてImpact Factorが世界最高クラスとなっているIEEE Wireless Communications, IEEE Networkを含む学術論文誌でも、論文が掲載(確定)されている。さらにICA3PPの国際会議で最優秀論文賞を受賞するなど、以上のことから、本年度の研究課題の進展度は、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
PSにおけるユーザの参加は、もっとも重要な要素である。一方、PSに参加することはユーザにとってバッテリーパワーや計算パワーを要し大きな負担(コスト)がかかるため、ユーザの参加を促す仕組みが必要である。さらに、PSに参加することによって、プライバシーが漏洩されるのではという懸念もある。そこで27年度の課題として、ユーザを積極的に参加させる激励型のインセンティブモデルの構築に取り組む。既存研究の多くは固定した奨励でユーザのインセンティブを引き出そうとするだけで、時間、状況についての動的対応ができていない。本研究はGame Theory及び経済学の理論でユーザ参加の動機モデルを構築する。次に、PSは正確性が求められながら、同時にスケーラビリティも満たさなければいけない。正確性を保った上で、参加するユーザを選別することは、システムの安定性に役立つのみでなく、ユーザサイドのコストの削減、ユーザの積極性を上げるのにつながる。本研究では、確率論のアプローチで最適なユーザ参加数を算出し、PSネットワークのスケーラビリティを保つ研究をする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中に研究代表者の機関異動があり、当初予定していた国際会議への参加などの出張を見合わせたため、次年度への繰り越しとした。また同様の理由で、当該年度中に人的および物理的研究体制の変更を余儀なくされたため、物品費・謝金等の当初の使用計画を変更せざるを得なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の現在所属する大学にて、当初予定通り研究を遂行する。研究代表者が持つ研究室で研究を行うため、設備を整える必要がある。したがって高スペックな実験用PCを始め、その他必要な周辺機器やメディアなどを購入する計画である。 また研究に必要な資料について、学術論文誌や学会誌の一部は大学が契約しているが、閲覧不可能なものについては適時購入する。また、書籍や雑誌についても大学附属図書館を介して閲覧・入手可能であるもの以外は、購入を予定している。
|